1回でもミスったら仕事がなくなる!?
──玉山さんが今の玉山さんになったのは何歳くらいなんですか。
「たぶん20代の後半ぐらいだと思います。ある作品をやっていて、何ひとつ自分の思い描いたとおりにできなかったんですよ。すごくショックを受けて、自分に自信をもてなくなった。カメラの前に立つのがすごく怖いし、俳優を辞めたいとも思いました。でも、そうならないように、すごく準備するようになったし、セリフをしっかり入れていくようになりました。
その後10年くらいたったころ、僕が悩んでしまった作品のスタッフさんがまた話をかけてくれて……。最初は出演するのを断ったんですよ。そのときのフラッシュバックがくるのが怖いし、またあんな思いをするのは嫌だなと思って。
でもよくよく考えたら、もう一度引き受けて自分が納得できる作品にすることができれば、もしかしたら僕の中でのうやむやが晴れるんじゃないかなと思って受けたんですよ。結果的に監督さん、脚本家さん、プロデューサーさんからも評価していただいて。それでようやく自分を取り戻せたというか、背負っていた大きなものが降ろせた感じはします」
──そんなことがあったんですか……。
「だからその作品を撮っているときは、気が気じゃなかったですよ。死にものぐるいで僕はやってましたね。
最初の作品のときも、自分なりにいろんなことを考えて現場に入ったんです。でも世界観がちょっと独特で、20代の僕はそこに対応できなかったんですね。かといって作品自体や僕の演技があれこれ批判されたわけでもないし、なんなら “すごく良かったよ”と評価もいただいていた」
──では、ひとり玉山さんだけが感じていた違和感だったんですね。
「当時の関係者の方とまたお会いすることができて、食事をしながら “実はこういうことがあって受けるのを怖がっていたんです”みたいな話を打ち明けたんですよ。そしたら全然気づいてないし、 “え、いい作品だったじゃん”みたいな話で終わり(苦笑)。
周りがなんとも思っていないのに、僕ひとりでこんなに苦しんでいたんだって知ると、すごくちっぽけだなぁと思ったし、自分のメンタルの弱さを痛感したし」
──でも仮に1回失敗したとしても、そこから復活した経験がある人は強いと思います。
「たぶん当時の僕は1回でもミスったらもう仕事がなくなるって思っていたんでしょうね。幸いなことにお仕事をたくさんいただいて光栄だったんですけれども、そういう状態が続いて疲弊していた部分があったのかもしれないし。
そこからあまり自分に対して期待をしなくなったというか……。自分自身に対して期待しすぎる人生を選ぶと、たぶん僕はもたなかったと思います」