そっと背中を押してくれる作品に

 最新作は主演映画『今はちょっと、ついていないだけ』(2022年4月9日公開)。

 玉山はかつては時代の寵児(ちょうじ)となった人気カメラマンだったが、ある事情で表舞台から姿を消した主人公・立花浩樹を演じている。

ここ最近の日本の風潮として、いちど失敗するとリスタートを切るのが難しかったり、セカンドチャンスがすごく少ないとか、だんだんミスが許されない時代になっちゃっているじゃないですか。そういう世の中だからこそ、こういうそっと背中を押してくれるような作品がハマるんじゃないかって。

 僕自身もそうでしたが、この映画の主人公みたいな挫折だったり心の闇というのは、40代を迎えるまでには誰もがもっている部分だと思うんですよね。そこに対して蓋(ふた)をしたり見ないようにする人生を歩むのか、ちゃんと向き合う人生を選ぶのか……。みなさんが共感できるキャラクターになればいいなと思って演じました」

(c)2022映画『今はちょっと、ついてないだけ』製作委員会

 主人公・立花浩樹は20代前半のころ、世界の秘境を旅するドキュメント番組『ネイチャリング・シリーズ』に出演し脚光をあび、ベストセラー写真集も出したが、今はすっかりうらぶれているという設定。

今回の映画で、立花が昔の自分の映像をしみじみ見ているシーンがあるんですが、あの感覚が僕はわかるというか……。今の自分を奮い立たせるために、つい見ちゃうときもあるのかもしれないし、当時の自分がすごく強く輝かしく見えることもあると思うし。

 この感覚って、たぶんこういう仕事をしていないとあんまり味わえないと思うんで」

──そうかもしれません。芸能人の方の場合は形として残っていますもんね。

「そう。例えば大きなプロジェクトに関わって大成功した方が、昔の資料を見ながらふと思いにふけったりするのかもしれませんが、映像として明確に残っているのは、あんまりないですよね」

 振り返れば、若き玉山が一躍注目されたのは21歳のときに出演した『百獣戦隊ガオレンジャー』のガオシルバー役。ドラマ中盤から登場した「第6の戦士」が、主役のレッドやブルー以上にお母さんたちから人気を集めたものだった。そこから俳優として少しずつ足場をひろげていった。

もちろん演技のテクニックや知識は今のほうが絶対にたくさんもっているに違いないのに、やっぱりあのときの自分ってすごく輝いていたなとか、力がみなぎっているなとか思いますし、本当に不思議なんですよ。

 今回の映画の立花にしても、かつて脚光を浴びた自分にあまり誇りをもてないでいるんですが、それでも自分の過去に向き合って前に進もうとするんです

 彼に写真を撮る喜びを思い出させてくれたのは、シェアハウスに集う不器用な仲間たちとの笑顔の日々。失職したテレビマン、将来に悩む美容部員、復活を望むタレント芸人。立花も彼らもゆったり流れる時間の中で、それぞれの心が本当に求めるものを見つけ出そうとしていた。