『血の婚礼』は「現代でも起こりうる、現実的な話」だと気づいた

『血の婚礼』は、これまで各国で何度も上演されてきた歴史があり、演劇好きにはファンも多い著名な戯曲です。だから「しっかり取り組まなければ」と思う一方、「ドロドロした重いストーリーで、硬い印象もあるこの戯曲をなぜ今、上演するのか」という思いもあり、プロデューサーにも尋ねたんです。話をしてみると、「これは現代でも起こり得る現実的な話なんだ」と気づきました。殺すまではいかなくても、結婚するときに元カレや元カノが出てきて「結婚やめました」というケースはありえますよね。「普遍的な人間ドラマとしてリアルに伝えられるのではないか」と思うと、役者としてのやりがいを、より感じられる作品です。

 演じる際には、シェークスピアの悲劇のような重々しさを表現するほうがいいのかな、とイメージしていたのですが、生演奏が入る演出などエンターテインメント的な要素も多く、私が最初に考えていたよりライトな感覚で観ることができるような仕掛けもたくさんあるんですよ。舞台美術は建築家の方が担当していて、床が土になっていたり、演者が壁を壊していったり、道具が上から落ちてきたりと、想像もできないような大胆な舞台機構が楽しめます。

 これまでに、イプセンの『幽霊』やブレヒトの『マン イスト マン』など「ザ・戯曲」といえるシリアスな作品にも出演していますので、今回もそうした戯曲らしい作品を予想していたのですが、杉原さんの演出がおしゃれでモダン。音楽は、生演奏の癒やされる曲調にのせて、詩人でもあるロルカの抒情的な韻文が心地よく響きます。大量のセリフと格闘していますが、シェークスピアのような言語的豊かさや、人物像の繊細さもあり、硬軟入り混じった魅力もある一作だと感じています。

「キャストはもちろん、音楽や美術にもぜひ注目してほしいです」と安蘭さん