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ドラマ・映画・舞台

加藤和樹、芝居に興味ゼロだった自分を変えた“運命的な出会い”、初挑戦のラブコメディ舞台は「笑わせにいかない」

SNSでの感想
加藤和樹さん。強さと優しさが入り混じった表情が印象的だ 撮影/伊藤和幸
目次
  • コメディだからと笑わせにいってはいけない。自然に笑いが込み上げる作品に
  • 「正反対の性格の二人が一緒にいる意味は?」演出家や共演者らと考え続けていた
  • 俳優・山崎育三郎さんと演出家・小池修一郎さん、二人との出会いが運命を変えた

 2022年9月から10月にかけて全国4都道府県で上演される舞台『裸足で散歩』で主人公を演じる俳優・加藤和樹さん。舞台だけでなく映画、音楽ライブと幅広く活躍する加藤さんですが、芸能界に入ってすぐは、目標がなくて挫折を味わった上に、お芝居にはまったく興味がなかったんだとか。そんな加藤さんが、ミュージカルに正面から向き合うことになったきっかけを、今回の作品にかける熱い思いとともに語ってくださいました。
 

◇   ◇   ◇
 

コメディだからと笑わせにいってはいけない。自然に笑いが込み上げる作品に

 ミュージカルの舞台出演が多くなってきているなか、「いつかコメディを演じてみたい」と、ずっと希望を抱いていました。実は以前からコメディが好きで、見る機会も多かったんです。今回、アメリカを代表する喜劇作家、ニール・サイモンのラブコメディ『裸足で散歩』で、ついにチャンスをいただけて、「ぜひやらせてください」と二つ返事でお受けしました本間ひとしさん、松尾貴史さん、戸田恵子さん、と共演者も芝居巧者な方々ばかりで豪華。ゼロから勉強させていただくつもりで取り組んでいます。

 舞台は2月のニューヨーク。堅物の新米弁護士・ポールと、明るく自由奔放な若妻のコリーが新婚旅行を満喫して、新居のアパートへと戻ってきたばかり……という場面から始まります。二人の部屋は最上階の5階で、エレベーターはなく、天窓も割れたまま。そこにコリーの母親が突然、訪ねてきたり、アパートに住む変わり者の住人が乱入してきたり。そんななかで起こる、コリーとポールの心のすれ違いを、しゃれたセリフのやり取りで生々しく描いていく物語ですニール・サイモンの戯曲を演じるのは初めてですが、彼の実体験を反映している初期の作品ということもあり、そのリアリティを追求していきたいですね。

 僕の演じるポール役は、新米弁護士で、初仕事が明日に迫り不安を感じているなか、高田夏帆さん演じるコリーとの新婚生活が始まる。それが、いきなりうまくいかない。だから気持ちの揺れ、心情の動きが多いんですね。ポールをはじめとして、登場人物5人それぞれの心情的な物語でもあるので、会話をテンポよく進める難しさと格闘しています。

「プレッシャーはありますが、現場はとても楽しいですよ」と加藤さん 撮影/伊藤和幸

 この作品は小粋なセリフとハートフルな作風で日本でも人気が高く、たびたび上演されていますが、台本を初めて読ませていただいたときは、ポンポンとセリフが進み、ついつい笑いが込み上げてくる面白さに、「さすがコメディの王道戯曲だ」と感銘を受けました

 今は稽古も終盤にかかり、細かいところを調整していく段階までできあがってきたところです。ニール・サイモン作品の特徴のひとつは、膨大な量のセリフ。気の利いた言葉の激しい応酬が満載で、とにかくセリフと動きが多いので、全体を通しながら、気持ちの流れを言葉にのせて、最後の仕上げを施しているところです。

 コメディだから、観客を笑わせることが役者の使命、ぐらいに考えていたのですが、稽古を重ねてきた今、実はそれは違うのではないか、と考え方をシフトしています。「登場人物たちは、無理に誰かを笑わせようとして生きているわけではない。懸命に日々を過ごすわれわれと同じ人間である」ととらえるようになったんです。なので、コメディだからといって、積極的に役者が仕掛けて客席の笑いを取りにいく、といった小賢しさは、むしろ封印しなければならない、と。何気なく観ていて思わず笑いが込み上げてくる、そんな仕上がりになればいいな、と思っています。

 ただ、翻訳の福田響志さんは、ニューヨークにも長く住んでいらしたので、台本読みのときに「ここが笑いのポイント」と指示を入れてくれました。日本人にはなじみのないニューヨークの固有名詞に補足を入れたり、今風の会話に訳されたりしていて、お客さまには現代的なニール・サイモンを堪能していただけるのではないか、と期待しています

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