毎日使う道具が、いざというときの備えにつながる
──自分たちが生きるための技術が、被災地域全体の負担を減らし、技術を持たない人たちも助かる。それも、「防災キャンプ」の大きな意義なんですね。
せつこさん「アウトドアの道具やスキルを、本当に必要なときに役立てるためには、普段から慣れていてこそ。だから、わが家の道具にも日常用とアウトドア用の境目はほとんどありません。長年いろいろ使ってきた中で、防災にも活用できるものと、その使い方を見つけてきたんです」
──例えばどんな道具がおすすめですか? アウトドア初心者にも使いやすいものを教えてください。
せつこさん「まずナイフですね。『モーラナイフ』というブランドのものは切れ味はもちろん、性能も優れていて調理にも十分、活躍します。ナイフに付属しているメタルマッチはフェロセリウムという合金製のもので、ライターやマッチと違って水に濡れていても火がおこせます。野外で火を得るための第3の道具として、使い方を知っておくといいですよ。
それからまな板。普段の調理に、アウトドアでも使う木製カッティングボードを使います。天然の木目も美しく、プレートとして料理を盛ったりテーブル上でおつまみのチーズやハムを切ったりもします。
鍋やフライパンも同様に、家でも外でも使うものばかり」
──家と野外とで使うものを分けていないんですね!
せつこさん「特に線引きはしていないんです。そもそも使いやすい道具というものは、シンプルで無駄がない。なので非常時に持ち運びもしやすいんですよ」
──それでは、普段から使うものについて野外での上手な活用法は?
せつこさん「チャック付きビニール袋や密閉できるコンテナは、食品の小分けや保存、野外への持ち出しにみなさんもよく使われると思います。乾麺を入れてゆでる前に水につけておけば時短料理もできるし、食材以外でも濡らしたくないものを持ち運ぶのに役立ちます。
それから電池を必要とする道具を選ぶときは、売っている場所が少ない規格のボタン電池などを使うものより、単3か単4電池を使うタイプを。電池切れのときに国内外どこでも手に入りますし、ラジオ、懐中電灯などいろいろな製品で多用できるので、同じ電池を使う道具を選ぶこともポイントですね」
──やはり知っておきたいのは災害時に役立つもの。ぜひ教えてください!
せつこさん「日用品でもしものときに役立つのは、ラップと布ガムテープです。アウトドアや災害での負傷は、絆創膏では間に合わない場合が多々。ラップなら広い範囲を覆えて、雑菌の侵入を防げます。処置する人の手に巻けば除菌手袋の代わりにもなり、ガムテープも止血用にきつく巻く、骨折には添え木をして巻くなど用途は多彩。知識があれば、どのお宅にもある日用品が救急にも確実に役立ちますよ。
わが家では普段からハンモックを使っていますが、これはアウトドアでのんびりするのにおすすめなうえ、災害時にはケガをした人のための担架代わりにもなります。さらに、雨や風をしのぐためのシートにしたり身体に巻いて防寒にも」