──それは目からウロコですね! ひとつの道具で何役もこなせるとは。

せつこさん「新しいキャンプギアはたくさん生まれるんですけど、大切なのは使いこなせる知識を持っていること。小さなお子さんのいる家族と大人だけのキャンプでは、必要なものも違ってくる。

 だからこそ“これでなくてはならない”というものよりも、“あれにもこれにも使える”という道具がいいんです。それは、家と外で使うものに区別がないのと同じなんです」

──そう考えると、日常生活とキャンプ、防災の備えに必要な道具を選ぶ視点が変わってきます。いろいろ道具をそろえるよりも実際に役立つものを持つこと、いつでも使えるように日常やアウトドアの経験で実践してみることが大事なんですね。

一さん「そう。ときには頑張ることをサボって、非日常へ逃避する。わざわざ遠い場所へ出かけていってアクティブに遊ぶ必要はなく、自宅の庭でも近所の河原でもいい。その“サボる”時間から自然と触れ合い、さらにはそこで培った経験を、災害時で生き抜く防災のスキルに生かしてほしいと願っています。

“サボる防災”とは、防災をサボるのではありませんよ。肩の力を抜いて、自分たちの足元を見つめ直し、将来の人たちのことも考えて、自分たちに合った防災スキルを身につけてほしいんです。それは生きる力そのもの。

 だからこそ、僕たちは言いたい。人生にサボりを、サボるために防災を、と」

  ◇   ◇   ◇  

 アウトドアを楽しむスキルがあれば、もしもの備えにもなる。防災のハードルがぐっと下がって、前向きな気持ちで備える暮らしを始められそうです! この機会に眠っている防災グッズも見直してみませんか? 

(取材・文/秋川ゆか 撮影/飯貝拓司)

寒川一さん・せつこさん夫妻 撮影/飯貝拓司

《PROFILE》
寒川 一(さんがわ・はじめ)
災害時に役立つアウトドアの知識をキャンプ体験、防災訓練、書籍などを通して伝えるアウトドアライフアドバイザー。北欧のアウトドアプロダクトを多く扱う(株)UPIアドバイザー。アウトドアでのガイド・指導はもちろん、テレビ・ラジオ・雑誌といったメディア出演など、幅広く活躍中。著書『焚き火の作法』ほか多数。

寒川せつこ(さんがわ・せつこ)
北欧ソト料理家、(株)UPIアドバイザー。スカンジナビアのアウトドア文化を主に料理ワークショップを通して発信。レシピ提供したメディアは『 趣味どきっ! たのしく防災!はじめてのキャンプ』『メスティンレシピ』、キャンプ料理サイト「ソトレシピ」など多数。

キャンプと防災の両方におすすめのキャンプギアなども掲載している新刊『「サボる」防災で、生きる』(寒川一・寒川せつこ著・主婦と生活社刊) ※記事中の写真をクリックするとアマゾンの商品紹介ページにジャンプします