「マイアミ午前5時」ジャケット秘話、若松氏が「絶対に伸びる」と推す名曲は

 若松氏がプロデュースしたアルバムのオリジナル曲のうち、最上位となったのは24位「マイアミ午前5時」、次いで25位「セイシェルの夕陽」。いずれも『ユートピア』収録で、Spotifyでの再生回数はすでに50万回を超えている。

「『マイアミ午前5時』は来生たかおさんのメロディーですが、大村さんのアレンジもすばらしいので、この人気も納得です。ちなみに、(聖子が水面から顔を出した)ジャケット写真は、よくオリビア・ニュートン=ジョン(イギリス人歌手)のジャケットと比較されますが、まったくの偶然です。これは、新宿住友ビルにあったプールで撮りました」

松田聖子。浴衣姿とはじける笑顔がまぶしい!

 それにしても、来生たかおや小室哲哉、さらにはランク外だが林哲司など、ほかのアーティストならシングルに採用されることの多いヒットメーカーでも、聖子作品ではアルバム曲のみの提供というのもすごい。

「そうですね、シングルのほうは、ユーミンや大滝詠一さん、財津和夫さん、細野晴臣さんとビッグネームの名作がそろっていて、なおかつ発売は年に4枚となると、どうしてもそこに入り込んでもらう余地がなかったですね。かといって、アルバムで手を抜いていたわけではありませんよ」

 だからこそ、当時のヒット・シングルと並んでこれだけ聴かれていても当然と言えるだろう。また、ほかのアイドルでは「真夜中のドア」(松原みき)や「September」(竹内まりや)の世界的なヒットから、林哲司作品が総じて上位入りする傾向があるのだが、ここでは挙がっていない。これは、聖子への提供作で人気がないのではなく、むしろそれ以外の楽曲の人気があまりに高いゆえに、林哲司作品が埋もれているだけなのだ。

「そういえば、このランキングには『赤い靴のバレリーナ』(アルバム『ユートピア』収録、作詞:松本隆、作曲:甲斐祥弘、編曲:瀬尾一三)が入ってないですね(実際には70位近辺)。この曲や、42位の『ひまわりの丘』(アルバム『Pineapple』収録、作詞:松本隆、作曲:来生たかお、編曲:船山基紀)は、人気の『マイアミ午前5時』みたいに直球で入ってくる歌ではないけれど、等身大な感じがして、個人的にとても気に入っています。サブスクでは、再生回数が少ないと上位に表示されないままで、そのよさがなかなか伝わらないというのは、もったいないですね。でも今後、絶対に伸びてくる名曲だと思います!

 ちなみに「赤い靴のバレリーナ」は、松本隆が自身の歌詞の中にある《前髪を1ミリ切りすぎた午後 あなたに会うのがちょっぴり怖い》という部分を、“「好き」や「愛してる」という言葉を使わずに感情を表現した代表的な作品”として、『世界一受けたい授業』(日本テレビ系)で紹介している。サブスクでは、どうしても歌詞よりもメロディーやサウンド先行で上位入りする傾向にあるが、今後、この繊細な世界観が若い世代にも徐々に浸透していくことにも期待したい。

 ところで、筆者はカラオケで歌ったことのない楽曲に挑戦する際、聖子の楽曲は、あまり聞き覚えのないアルバム曲でさえ、圧倒的にメロディーが覚えやすくて驚かされる。これも、若松氏の戦略なのだろうか。

「それは大いにありますね。誰が作ったメロディーであっても、私が選ぶ基準は、感覚的に“覚えやすいかどうか”。PART1でお話しした、『赤いスイートピー』を作ってくれたユーミンに当時、Aメロのラスト(タバコのにおいのシャツにそっと寄り添うから~の部分)が下がっていく感じで終わるのを、“春に向かって気持ちが盛り上がっていく感じに直してください”ってお願いしたのも、同じ理由です。もし下がったままでも、楽曲の完成度としては何ら問題ないのですが、やはり自然に歌を覚えやすいものにしたかったのです」

 ちなみに、覚えやすいものを求めた理由は、歌い手である聖子のスケジュールを配慮してのことではありません。それは、全く関係ない。もし、“聖子が歌いやすいように”という基準で選んでしまうと、楽曲としては間違いなくイマイチになるんですよね