売野雅勇が紡ぐ日本語の美しさが好き。自分の個性は「極力出さないようにした」

 また、シングルのカップリング曲にも注目すると、現在の1番人気は42位の「Ivory Coast」('87年、10thシングル「アイドルを探せ」のカップリング)。本作は、作詞を手がけた売野雅勇が、《菊池桃子さんの代表曲といってもよいのではないかと考えることがある。全体のムードがただならず艶っぽくて、魅惑的に響いてくるところが最大の魅力》と、自選CD BOX『Masterpieces~PURE GOLD POPS~売野雅勇作品集「天国より野蛮」』にて絶賛している。アフリカをイメージした歌詞や、久石譲によるアンビエントなサウンドを取り入れた斬新なアレンジを、桃子本人はどう感じていたのだろうか。

確かに全体の雰囲気が変わっていますが、売野先生が使う日本語の美しさがすごく好きで。リズムに乗るのも大切だけれど、歌詞がきちんと聴こえるように意識して歌っています。作詞してくださる方が男性、女性どちらであるかは、特に意識していません。おそらく先生方が、“菊池桃子への提供作品”だと考えて作ってくださっているから、どの歌詞もスッと自分の中に入ってくるのでしょうね。

 売野先生が今年書いてくださったのが、新曲の『Again』です。林哲司先生に聞いたところ、売野先生が、“桃ちゃんの歌い方って、日本語が聞き取りやすいよね”と言ってくださっていたそうで、心がけていたことが先生にちゃんと伝わっているのがわかり、“やってきてよかった”と思いました!

 その「Again」は、配信から2か月と短期間ながら、すでに46位まで上昇しており、さらなるランクアップが期待される。そして、もうひとつの新曲「奇跡のうた」('22年10月現在は未配信だが、「Again」とともにCDアルバム『Shadow』に収録)は、母性を感じさせるような、凛とした佇(たたず)まいが印象的だ。

「母性はまさに意識したところです。メロディーも歌詞もわかりやすく表現することと、自分の個性を極力出さずに、作曲家の方が作ってくれた音符の並びや、作詞家の方の言葉たちを忠実に伝えることを心がけました。私は、声そのものがちょっと変わっているので、個性をあえて作らなくても、楽曲の魅力が伝わるのかなと思います」