2022年、CDデビュー25周年となるKinKi Kidsの堂本光一と堂本剛。たび重なるメディア露出の効果により、今年7月に入ってから、20周年の2017年末にリリースしたベストアルバム『THE BEST』がオリコンの週間CDアルバム37位を記録約4年ぶりにTOP40にランクインを果たすなど、確実にKinKi Kidsフィーバーが起きている。今回は、10周年を迎えた2007年から2011年までの5年間におけるカラオケランキング(JOYSOUND調べ)を見てみよう。

(1997〜2001年を分析した第1弾:KinKi Kids、CDデビュー25周年! カラオケランキング25年分から読み解く、華麗なる人気曲ヒストリー【#1】
 2002〜2006年を分析した第2弾:KinKi Kidsカラオケ人気曲ヒストリー【#2】名曲「愛のかたまり」が発売5年目で上昇、“打ちひしがれ事件”も懐古

ソロ活動が活発化し、シングルのリリースはペースダウン

 デビュー10周年を迎えた2007年以降、堂本光一と堂本剛のソロ活動はますます活発になっていった。

 光一のほうは、前年の2006年にアニメ『獣王星』の主題歌となったシングル「Deep in your heart/+MILLION but -LOVE」でソロデビューし、同年に1stアルバム『mirror』を発売。主演を務める舞台『Endless SHOCK』の公演がレギュラー化する中で、こうしたソロ作品を軸としたコンサートツアーも並行して行われるようになった。

 また、剛のほうも、2006年にソロプロジェクト名をENDLICHERI☆ENDLICHERIとして、紫を基調としたアートワークでファンク・ミュージックに挑んだ(本人によると、両極である「赤」と「青」が混合した色だからこそ「紫」が好きとのこと。この「協調」や「融和」といった考えは、その後の作品にも色濃く表れていく)。2009年にはプロジェクト名を剛紫(つよし)として、雅楽師の東儀秀樹とコラボし故郷・奈良をイメージした楽曲を発表するなど、より個性的なソロ・アーティストに。

 また、俳優としては、光一が堤幸彦監督・演出によるドラマ『スシ王子!』(2007年。2008年に映画化)で主演し、「お前なんか握ってやる!」という決め台詞を放って寿司勝負を繰り広げる米寿司(まいず・つかさ)を演じた。剛のほうも、福田雄一脚本・演出による主演ドラマ『33分探偵』(2008年。2009年に続編も)にて、捜査をかえってかく乱する推理をしては「なんやかんやは……なんやかんやです!」と言って逆ギレするという鞍馬六郎を好演。それぞれがコメディアンとしての才能を開花させたのもこの時期だ

 ソロ活動で多忙なためか、この5年間におけるKinKi Kidsとしてのシングルのリリースはわずか7作。前の1997~2001年、2002~2006年がそれぞれ13作だったので、半分近くまでペースダウンしたことになる。しかも、新たなKinKi Kids像を求めていったのか、デビュー10周年の'07年にリリースしたシングル「BRAND NEW SONG」のように、これまでは多かった迷わずカラオケで歌いたくなるような“分かりやすいポップス路線”が少なくなる

 リリースの少なさや作風の変化から、2009年以降のシングル売上は20万枚を割るように。この時期には「着うた」や「着うたフル」によるダウンロードヒットが量産されたことや、デビューから10年たったことで、初期のコアなファンも就職や結婚、子育てなどのライフスタイルが大きく変化し始めたことも、セールス面で不利に働いたであろう。

 ちなみに、NEWSから歌のうまさに定評のある手越祐也と増田貴久が男性デュオ・テゴマスとして2006年末にCDデビューし、「ミソスープ」「青いベンチ」などカラオケヒットを出していった。さらに、がメンバーの主演ドラマと絡めて、NHK紅白歌合戦に出場(2009年~)するなど、ジャニーズの後輩グループがCDやカラオケのヒットにより存在感を高めていったのもこのころだ

 そういったKinKi Kidsにとって逆境となる時期でも、実際は楽曲の魅力によってカラオケでヒットした新曲があり、また、旧作に対する再評価も進んでいる。以下、1年ごとに見ていこう。

ファン投票での人気カップリング曲が一気に上昇

2007年「KinKi Kidsカラオケヒット曲ランキング」(JOUSOUND調べ)

 まず、2007年は前年末に発売されたシングル「Harmony of December」が2位にランクイン。この5年間に出た新曲の中では最高位だ。一青窈「ハナミズキ」の作曲で注目を浴びるようになったマシコタツロウ作詩・作曲によるラブ・バラードで、この曲に限らず、冬の寒さと人の温もりを対比した楽曲が人気なのもKinKi Kidsの特徴だろう。それもあってか、KinKi Kidsのシングルは、デビュー月で何かと記念リリースのある7月の7作に次いで、11月、12月ともに6作と、年末時期のリリースが非常に多い。これは偶然ではないはずだ。

 また、'01年発売の「愛のかたまり」が前年の5位から3位、'05年発売の「雪白(せっぱく)の月」が30位から26位と、いずれもシングルのカップリング曲が上昇しているのも興味深い。これは、10周年を記念したベストアルバム『39(サンキュー)』の選曲にあたってのファン投票で「愛かた」が1位、「雪白~」が3位になり、ともに収録されたことで、再認知が進んだことが原因だろう。

「雪白~」は、作詩:Satomi、作曲:松本良喜という、中島美嘉のヒット曲「雪の華」を生んだコンビによる美しいバラード。ふたりの切ない歌声と繊細なメロディーで、恋人同士が別れたあとの情景が、よりいっそう鮮明に浮かぶ。'05年のシングル「SNOW! SNOW! SNOW!」の通常盤のみに収録されたカップリング曲だということも考えると、ベスト盤で改めて好きになった人も多いと考えられる。

この時期のロングランヒットとなった「Secret Code」

2008年「KinKi Kidsカラオケヒット曲ランキング」(JOUSOUND調べ)

 2008年は剛主演のドラマ『33分探偵』の主題歌となった「Secret Code」が6位にランクイン。この5年間のシングルの中では、もっとも長くTOP10入りしており、この時期の代表曲と言えるだろう。こちらは、作詩を前述のSatomi、作曲・編曲を井上ヨシマサの実兄である井上日徳が手がけ、ブラスアレンジには東京スカパラダイスオーケストラの北原雅彦も参加したファンキーなナンバー。エンディングのみならず、ドラマ中盤のコミカルな捜査や追跡シーンでも必ず流れるなど、楽曲がかかる機会が多かったことに加え、剛がソロ活動で培った世界観が、KinKi Kidsの作品としてもしっくりくるようになったことも、カラオケヒットの要因かもしれない。

 また、25位には2005年のアルバム『H album -H・A・N・D-』収録の「恋涙(れんるい)」が前年より順位を3つあげてランクイン。「愛かた」同様に、作詩:堂本剛、作曲:堂本光一による合作だが、「愛かた」の女性目線を引き継ぎつつ、それとは対照的な明るい雰囲気の楽曲だ。こちらも『39』制作時のファン投票で5位となり、選曲されている。

2009年「KinKi Kidsカラオケヒット曲ランキング」(JOUSOUND調べ)

 2009年の中では、前年の「Secret Code」が5位に1ランクアップ、9位に「約束」が登場した。「約束」は、愛を誓いつつも相手の裏切りがあり、けれどそれに気づかないふりをするという、幸せながらも翳(かげ)りのある心情をつづったミディアム・チューン。地中海地方を想起させる異国情緒ある演奏が、まるで1本の上質な映画を観るかのように想像力を掻き立てる。しかし途中、ふたりが掛け合って歌ったり、サビで転調したりと、素人がカラオケで歌うのはやや難しく、聴くのも歌うのも“スルメ系”の楽曲と言える。

1990年代の人気ソングに再注目が集まる

2010年「KinKi Kidsカラオケヒット曲ランキング」(JOUSOUND調べ)

 2010年は、前年10月に発売された「スワンソング」が5位に。すでにお手の物となった冬の切ないナンバーだが、白鳥が命を終える間際の美しさと恋の終りの儚(はかな)さを重ねた歌詩は、さすがの松本隆と言えるだろう。また、この2010年は、作詩:堂本剛、作曲:堂本光一のシングル「Family~ひとつになること」が年末にリリースされたのみで新曲がない分、「ジェットコースター・ロマンス」「雨のMelody」など、1990年代のアップテンポな楽曲の再浮上が目立った。どちらも華麗に歌い踊る楽曲だが、新曲でじっくり聞かせるタイプを歌う反動で、思いっきり盛り上がれる過去の楽曲が再評価されたのかもしれない。

2011年「KinKi Kidsカラオケヒット曲ランキング」(JOUSOUND調べ)

 そして、2011年には'99年に発売された「フラワー」が前年の7位から4位に浮上。'00年の3位以来、11年ぶりに大きくジャンプアップしている。この年は東日本大震災が起こり、『音楽の日』『ベストヒット歌謡祭』『ミュージックステーションスーパーライブ』といったテレビの音楽特番で彼らが積極的に「フラワー」を歌ったことも大きく影響しているだろう。実際に、サビの〈僕らは愛の花咲かそうよ/苦しいことばっかりじゃないから/こんなにがんばってる君がいる/かなわない夢はないんだ〉という歌詩に救われた、というファンのメッセージも番組中に何度か紹介され、改めて音楽のチカラを感じさせられた。
 

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 この5年間はKinKi Kidsとしての新作が少ない分、かつての歌いやすいヒット路線の楽曲や、ベスト盤収録のアルバムやカップリング曲の評価がより進んだ。しかし、新曲のほうも、キャッチーさよりも味わい深さを優先された楽曲が多く、この25周年を機にあらためて聴き直すと、ファンの方も人生経験を重ねた分、違ったふうに聞こえるのではないだろうか

 また、ソロ活動の多さから、憶測ゆえの不仲説が出始めたのもこのころだろうか。これに関しては、今年7月1日放送の『金スマ』(『中居正広の金曜日のスマイルたちへ』TBS系)での、司会の中居正広とふたりのやり取りが興味深かった。中居が「お互いにムカつくことないの?(笑)」と悪ノリで尋ねたのに対し、剛は「ムカつく?……それは、人に対して抱く感情なのかな?」と言わんばかりの不思議そうな表情をし、光一のほうも「チームとしてそういった感情はありえない」という感じのまったく動じない様子で、お互いの性格は異なりつつも、ともに未来を創り続ける信頼関係が見てとれた。そんなふたりだからこそ、この25周年にどんな作品や公演が準備されているのか、楽しみでならない。

《取材・文/臼井孝(人と音楽をつなげたい音楽マーケッター)》