「もっと動いて」もインパクト大、「いい声を使ってもらった」と畑中が推す曲は

 第7位には、「後から前から」以降のセクシー路線第2弾となる「もっと動いて」がランクイン。こちらはオリコンTOP100圏外だが、Spotifyでは前作の半数近くの再生回数となっており、知名度からしたら大健闘と言えるだろう。こちらも実際に聴いてみると、《♪だから、もっと動いて、もっと、もっと~》と、インパクトでは前作に負けていない。

「『もっと動いて』は、業界の方に好評みたいですね。セクシー系アイドルユニット『ベッド・イン』の中尊寺まいちゃんがカバーしてくれたことも注目を集めたのでしょうね」

 さらに下位を見てみると、意外なことに、第9位「西風」、第10位「誘惑」と、アルバム『メタモルフォーゼ』収録のオリジナル曲がアルバムの中で突出した人気となっている。「西風」はシティポップファンにも人気が出そうな陽気なカリプソ風のポップス、「誘惑」は地中海を舞台としたムーディーな歌謡曲で、いずれも異国情緒が感じられることが人気の要因かもしれない。実際、Spotifyデータを調べたところ、「誘惑」は大多数が海外リスナーとなっている。

「10年以上前に、YouTubeに無断でアップされていた『西風』の映像が10万回以上再生されていたので、その影響もあるのかな? でも、この2曲は、大人な感じの声がいいですね。私の声って、やっぱりBGMになるかならないかのギリギリなところで、聴きやすいんじゃないかな」

 第14位には、ビートたけしがデュエット(厳密には、歌に入る前の寸劇と、歌唱中の合いの手担当)で参加した「丸の内ストーリー」もランクイン。こちらは、たけしが上司、畑中が部下のOLに扮し、社内不倫をコメディー・タッチに描いた楽曲だが、たけしの知名度からすれば、かなり低い数字かもしれない。

「これは、今の時代だと“女性蔑視”というふうに受け取られているのかもしれませんね。笑える歌でも、笑えないというか……。でも、フィクションとして聴いてもらえたらと思います」

 平尾昌晃とのデュエット・アルバムからも20位台に多数ランクインしている。これは圧倒的な人気曲でもある「カナダからの手紙」の延長で、アルバムごと聴いてみようというファンがいるからだろう。

「24位の『愛すべき僕たち』はホントにいいの! あのころの私の、いちばんいい声を使ってくださっています。あと、森口(博子)と歌った(今回は第42位のカバー曲)『紅すずらんの伝説』(ラブリーズ)も、ぜひ聴いてもらいたいです。このオリジナルが発売されたとき、“すてきな曲だなあ”とうらやましかったほどで、40周年のときに森口と歌えて、本当にうれしかったですね」

 さらに、このほかにも、注目してほしい楽曲がないか尋ねてみた。

『ロミオ&ジュリエット'79』(作詞:松本隆、作曲:平尾昌晃、編曲:佐藤準)が35位か……、これもホントにいい曲なんですよ。それまで平尾先生に合わせた滑らかな歌い方だったのを、リズムを刻んで歌うようにって指導されて、レコーディングを4回もやり直しました。あと、4thアルバム『香艶的夜總會(ロマンチック・ナイトクラブ)』(今回のSpotifyランキングではいずれの収録曲もTOP40圏外)は、写真集に合わせて出したのですが、最近のライブでも『Solitude』『悲酔鳥(ひよどり)』『Get Down』と、ここからいろいろ歌っているくらい、内容もすごくいいんですよ」

「ひとつひとつ楽曲を振り返っていくと、いろんな思い出がよみがえってきて楽しいです!」と笑顔で語る 撮影/山田智絵