どういう伝わり方をする作品なのかは、いつも意識に引っかけている
──本作では、外国人労働者問題などにも切り込んでいます。そういった「社会性とエンターテインメント性をどう両立させるのか」というのは映画作りで難しいところかと思いますが、俳優さんとしてはどう意識されていますか?
その作品によりけりですね。例えば、夏休みにバーンと封切られるような家族向けの映画でも変わるでしょうし、ミニシアターでコツコツとやるようなプログラムもあるでしょうから、この作品がどういう風に伝わっていく映画なのかというのは、常に意識のどこかに引っかけています。
──ドラマ「半径5メートル」では、トランスジェンダー役にも挑戦されていましたね。撮影当時のブログにも「演技のやり方ひとつで大きく印象が分かれてしまうぞ、という警戒心を抱いています」と書かれていらっしゃいました。
これまでいろいろな役をやらせてもらってきましたが、トランスジェンダーの役を演じるとなったとき、今までどおりのことをやっちゃダメだと思ったんですよ。時代は先に進んでいて、今世界がどういうふうに動いているのか、ジェンダーのこともある程度知っておいたうえで、こういう選択肢もあると提示しなければならないので、僕なりにアンテナを張っておかないといけないなと思います。ただセリフを覚えて芝居してというわけにはいかない年になりましたから。
──見る人たちも多様性が出てきた分、それぞれの意識や価値観がたくさんあるからこそ、提示する作品を役者としてどう見せるか、ということなんですね。
こういう時代だからこそ、 どういうバランスやさじ加減でできるかというのは慎重にならなければいけないところです。まぁ、それも演じるほうとしては面白い要素のひとつなんですけどね。