演じるときは観客側の目線も忘れない。自分自身に100点は出せないけれど──

 自身も、映画を年に数百本も見るほどの映画好き。演じる際には、お客さん側の視点も忘れたくないと話す。

多いときは、年に600本くらい見た年もありました。好きな監督や役者からも選ぶし、あとはジャケットが気に入って見てみることも。今は配信が主流ですが、昔はレンタルショップに行って、手に取ってパッケージを見て、“これにしよう”と選んでいましたよね。懐かしい! これって、失いたくない文化だなと思うんですよ。どんなに細々とでもいいから残ってほしい。……とか言ってますけど、配信も便利なのは事実ですからね(笑)。

 演じることはもちろんですが、今でも、お客さんとして作品を見ることも好きです。だからこそ、演じるときは第三者目線での“好き”の気持ちものせる。これは昔から、変わらないですね

 数々の出会いと刺激を受けて、成長を続ける。しかし、どれだけ経験を積み重ねても自分自身に合格は出せないと、ストイックな一面も覗(のぞ)かせた。

「いまだにどんな作品に出演しても、自分で“よくやった!”という気持ちにはなれません。でも、誰しもそうだと思うんです。なかなか自分を完璧だと思えることって難しいと思うんです。ただ、“パーフェクトだという満足感はなかなか得られないけど、後悔はしていない。やることはやった”、毎回そう思えるように準備をして臨んでいる感覚かもしれません。

 世の中にはいろうろな意見があるものの、“自分が演じた役は、そのときの自分の答えなんだ”と自分に言い聞かせるようになりました。もちろん、“これでよかったのかな”という迷いもあるから、100点は出せないけれど。でも、当時の自分の100パーセントを出したんだから、正しかったんだって。自分を信じてあげなくちゃなって思うようになったんです

 演じることの難しさと楽しさ、苦悩の先に見える喜び。その醍醐味を知った田中さんの瞳は、少年のようにキラキラと輝いていた。

澄んだ瞳で真っ直ぐにこちらを見つめて話してくれた田中さん。『ケンジトシ』でどんな表情を見せてくれるのか、楽しみです! 撮影/山田智絵

【取材・文/高橋もも子、スタイリング/中川原有(CaNN)、ヘアメイク/奥山信次(b.sun)】


【PROFILE】
田中俊介(たなか・しゅんすけ) ◎1990年生まれ、愛知県出身。'17年、映画『ダブルミンツ』で初主演を飾り、その後も映画やドラマ、舞台など多岐にわたり活躍を続ける。近年の主な出演作に、【舞台】『銀河鉄道の父』『ピサロ』('20年)、『ホームレッスン』('22年)、【映画】『タイトル、拒絶』『ミッドナイトスワン』('20年)、『僕と彼女とラリーと』『FUNNY BUNNY』『彼女』('21年)、【ドラマ】『妻、小学生になる。』『鎌倉殿の13人』('22年)など。'22年12月24日から主演映画『餓鬼が笑う』が公開中。'22年2月から、舞台『ケンジトシ』に出演予定。

舞台『ケンジトシ』

【東京公演】2023/2/7〜2/28@シアタートラム
【大阪公演】2023/3/3〜3/10@サンケイホールブリーゼ

作:北村想/演出:栗山民也
出演:中村倫也、黒木華、山崎一、田中俊介ほか

※公演詳細やチケット情報は公式HPへ→https://www.siscompany.com/kenji2023/