ひらりよりも姉・みのりがタイプ!?

 渡辺いっけい演じる安藤竜太は、大学病院から下町の診療所に赴任。教授の指示とはいえ、医療現場の第一線を離れることに不安を抱いていて、露骨に嫌そうな態度で下町にやってくる。第11話からの登場だった。

「最初のシーンとか、僕、すんごい力が入ってるんですよ。両国の街のロケから始まったんですけど、自分なりに演技プランを考えて入ったらディレクターに諭されました」

 それが、ひらりと初めて出会う場面。1台しかない公衆電話(まだケータイのない時代です)の順番をめぐるトラブルで、お互いの第一印象は最低最悪。

 一方、みのりと竜太も偶然、同じ日に出会う。みのりは折れたヒールのかわりに自分がはいていたサンダルを貸してくれた竜太にひと目惚れするが、ひらりが竜太のことをボロクソにけなすのを聞いてしまった手前、竜太への思いをズーッと打ち明けられなくなってしまう。

 社交的で要領のいい妹、引っ込み思案でチャンスを逃し続ける姉の対比も面白かった。

──その後、ひらりも「竜太先生が好きになっちゃった」と(笑)。対照的な姉妹ふたりからモテモテになりますが、正直いっけいさん自身はどちらがタイプなんでしょうか。

「女性の好みとしてですか!? そうですね、みのりちゃんのほうがやっぱり一緒にいて……。なんていうかなぁ、“みのりちゃんみたいなタイプが好きだな” って渡辺いっけいは思ってる

渡辺いっけい 撮影/松島豊

でも、たぶん実際に一緒に暮らしてみると、ひらりのほうがいいんですよ。あのぐらいポンと返ってくるほうが楽ですね、渡辺いっけいはそうですね。で、安藤竜太はというと……」

──いま再放送でも最初のヤマ場がきていますので、3人の恋の行方をドキドキしながら見させていただきますね(笑)。しかも当時は “みのり現象” なんて言葉が生まれたくらい、姉・みのりも注目されました。

「みのり役の鍵本景子ちゃんは、器用なタイプではなかった。そういう意味で、僕はああいうタイプがすごく好きでした。役者さんとしても女性としても、“鍵ちゃん” には魅かれましたね。役を演じている瞬間っていうのは、ちょっと擬似恋愛っぽい気持ちになる。鍵ちゃんはそうでした。

 一方(石田)ひかりちゃんはやっぱり芸能人、スターですよ。そういう気にはならなかったですけど、仕事の相性は抜群によかったですね

──たしかに2人の芝居を見ていると、本当に面白いです!

「あれこそ相性ですね。あの子、ぜんぜん緊張しなくてね。どじょうを食べるシーンが何回かあったんです。食べながら、お猪口(ちょこ)で日本酒とか。でも、お猪口って軽いから力の具合が難しくて、適当に力抜いてリラックスしてないとお猪口を持つ手が震えてくるんですよ。

 僕が震えてると、ひかりちゃんが不思議そうに “え、なんで震えるんですか!?” って。“緊張してんだよー” って言って、この子は緊張しないのかと思ってビックリしました

──ひかりさんは緊張しない?

「そう言ってましたね、“緊張するってわかんない” って。その感覚がすごい子でした」

NHK人物録「渡辺いっけい」より、石田ひかりとの共演シーン