松重豊から愛ある「ダメ出し」

 その後もドラマ、舞台で活躍が続く。近年の主な出演ドラマとして『大富豪同心3』(6月〜NHK BSプレミアム)、『ウツボラ』(3月24日〜WOWOW)、『夫を社会的に抹殺する5つの方法』(テレビ東京系で放送中)などで多彩な役柄を演じ、古巣の「劇団☆新感線」に招かれた『アテルイ』『髑髏城の七人 Season月〈上弦の月〉』ほか、各地で舞台にも立ち続けている。

 映画は『マリッジカウンセラー』が公開中。『シャイロックの子どもたち』『Winny』など公開待機の作品も控えている。

「『マリッジカウンセラー』は2021年の秋に撮った映画です。映画って公開まで時間かかるじゃないですか。これから公開されるのもいくつかありますね。

 コロナ禍の初年度に舞台が何本か中止になったりして、せっかく作り上げても上演できないっていうのは本当に悔しいしメンタルをやられるので、次の年は舞台をちょっと控えたんですよ。なので映像をやろうってマネージャーとも話して」

映画『Winny』ではPCソフトウェア開発者(東出昌大)を逮捕する刑事役。法廷での証言シーンは息詰まる展開に。3月10日より公開 (C)2023映画「Winny」製作委員会

「一つひとつがすごく面白かったんですけど、それが今年になって相次いで公開されるっていう状態です。僕も久々にそのときの自分をスクリーンで見て新鮮に感じていますね。テレビだと記憶が鮮明なままオンエアになりますけど。映画の場合、本当にセリフも忘れてるし、“空気” だけを覚えている状態で見るのが面白いし発見があります

──2022年の10月には還暦を迎えられました。心境の変化はありますか?

「ま、還暦ということもあるんですけど、コロナ禍の3年の間にいったん仕事が全部なくなって、じわっと復活した時期がありましたよね。久々に行った現場で同い年の松重豊さんに一喝されたんです。“誰だかわかんなかった” って。そのとき10キロくらい太ってたんです。

 “あなたねぇ、ダメだよ”って、切切と言われたというか。“お互いもうこの年になると、自分でちゃんと整えないとダメよ”と。そういうこと言ってくれる人、あまりいないでしょ?」

若き日の松重豊(左端)と共演した舞台『TABOO』の製作発表。後列右端が渡辺いっけい。作・演出の野田秀樹、主演・唐沢寿明の顔も見える(1996年3月) 撮影/横山孝行

「コロナ禍の中でもウォーキングはしてたんですよ。でも、もう“飲もう!” って決めて、かみさんと毎日好きなワインを飲んでたら、やっぱりじわじわと来ていました。自分でちゃんとしなきゃなって思ったきっかけですかね」

──それが『バイプレイヤーズ 〜もしも100人の名脇役が映画を作ったら〜』(2021年4月公開)の現場でしょうか。周りに年下のほうが多くなって、だんだん言われなくなりますよね。

「そうです。昔は “うるせえな、そういうの” って思っていましたけど、言われてるうちが花なんですよね、本当に松重さんは貴重ですね。

 彼ともインディーズ時代から仲間ですけど、同世代の活躍は頼もしく、現場で再会できたりするのがいちばんうれしいですね

(取材・文/川合文哉)

【主演作が公開中】
映画『マリッジカウンセラー』

出演/渡辺いっけい 松本若菜 宮崎美子
監督/前田直樹 脚本/松井香奈
池袋シネマ・ロサ、千葉劇場にて公開中。
2月4日〜大阪・第七藝術劇場、2月24日〜福岡・kino cinema天神ほか全国順次ロードショー

公式サイト https://marriagecounselor.jp 
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Twitter   @nakodo_movie 

《PROFILE》
渡辺いっけい(わたなべ・いっけい) 1962年10月27日、愛知県生まれ。大阪芸術大学卒。「劇団☆新感線」「状況劇場」をへて、1992年NHK連続テレビ小説『ひらり』で注目を集め、舞台、ドラマ、映画、バラエティーなどで幅広く活躍。主演映画『マリッジカウンセラー』が公開中。映画『シャイロックの子供たち』が2月17日、『Winny』が3月10日公開。深夜ドラマ『夫を社会的に抹殺する5つの方法』(テレビ東京系)が放送中。アニメ『おしりたんてい』(NHK Eテレ)のナレーション・マルチーズ署長役など声の仕事も多い。