アイドルの結婚についての忖度なしの感想

──まだももクロが駐車場とかでライブをしていた時期ですよね。ももクロでは誰推しだったんですか?

「高城れにさんですね」

──2022年に結婚されましたね。

「そうなんですよね。れにちゃんの結婚発表のときに、私のTwitterに“おめでとうございます!”みたいなリプが届いたんです。でも、ちょっと戸惑ってしまって」

──アイドルの結婚に対しては、いろんな意見がありますね。

「もちろんいいんですよ、アイドルが結婚しても。ただ自分の好きなアイドルが結婚したら祝福するタイプと本気で悲しむタイプのファンがいて。どっちが正しいってことはないと思いますが、私は後者で、アイドルに過剰な幻想や妄想を抱きたいタイプだったんですね。

 そこは前編で言った“LIKEとLOVEの違い”なのかもしれませんが、本気で好きだったアイドルが結婚すると、それまでの思い出が自分の中で全部ウソになっちゃう気がするんですよ」

──「ウソ」ですか?

「ウソというか、矛盾が生じるというか……。例えばファンの誰かに“結婚してくれ”と言われたら“私はみんなのアイドルだから、誰か1人と結婚はできない”って答えるのがアイドル的模範解答じゃないですか。

 そう言われたら納得するけど、そのあと普通に結婚されたら、みんなのアイドルだからってのはウソで“俺と結婚したくなかっただけじゃないか?”って思ってしまう。

 もちろん冷静に考えれば“みんなのアイドル”っていうのが真実じゃないのはわかりますよ。でも、ファンの頭の中には、アイドルと一緒に作っている共同幻想というか、お互いがルールを守って保たれている美しい世界観があるんです。

 そんなの勝手な思い込みにすぎないんですけど、アイドルが結婚して"人間宣言"するのって、そのルールから"いち抜けた"をすることなんじゃないかなって。そしたら初めての現場から、ガチ恋こじらせながらコールした美しい思い出たちが、突然オセロがひっくり返されるみたいに全部真っ黒になって、自分だけが取り残されたような気分になってしまう

──れにちゃんのオセロはひっくり返りましたか?

「いやいや、私は現場を離れて10年たってるし、現役のファンでもないので、そもそもこんなこと言う権利もないんです。ももクロや、れにちゃんのことは今でもとてもいい思い出ですね」

──今後はアイドルの結婚も、もっと当たり前になっていくんでしょうか。

「昔はアイドルの寿命も2〜3年だったから、脱アイドルして、ドラマなんかに出て、活動がどんどんフェードアウトして、そのあと結婚というのがお決まりだったから、今みたいに地続きで結婚というのはなかったんですよね。

 だけど、モー娘。以降、アイドルの寿命も伸びて普通に10年以上とかなので、相手のことをきちんと人間だと思わないと追いかけられないですよね。結婚も受け入れていくべきなんでしょう

ももいろクローバーZ(2013年) 撮影/近藤陽介