万太郎が先生を煙に巻いた日、『あまちゃん』ではアキが叫んでいた
ストーリーを追いかけるうちに、「ああ、このドラマって、こういうことが言いたかったのね」とわかってくる。それがよいドラマなのでは、と思うのだが、『らんまん』は最初からぐいぐいと「みなさーん、これからこういうことを言っていきますよ」と種明かししていく。ホワーイ、『らんまん』ピーポー? 厚切りジェイソン(ちょっと古い)に聞かれたら、こう答える。ビコーズ、男性が主人公だから。
『らんまん』が始まった4月3日、もうひとつの朝ドラが始まった。『あまちゃん』(2013年度前期)だ。NHK BSプレミアムで午前7時15分から再放送され、7時半から『らんまん』だ。続けて見ることにしたので、現代の北三陸から明治の高知県へと毎朝ワープしている。
万太郎が英語で先生を煙に巻いた14日、『あまちゃん』では主人公のアキ(当時は能年玲奈、現在はのん)が叫んでいた。「東京さ、帰りたぐねー」「ずっと、ここさいてー」「ここで、毎日、海さ、もぐりてー」。泣きそうになった。ここからの展開は知っている。ここに残るし、海にもぐるし、東京でアイドルになる。わかっているのに、グッと来た。
女性だから、だ。アキが女性だから、自分と重なる。「したい」と思うことを見つけるのは簡単でないし、それを口にするのも簡単でない。でも、言葉にしなければ、事態は動きださない。頑張れ、アキ。そんなこんなを思い、涙ぐんでしまう。
それに比べると、万太郎が「金持ちの気ままなお坊ちゃん」に見える。英語で先生に訴える場面も、「賢いんだな」と思うより「ちょっと鼻につくかも」と思ってしまった。10日放送の6話冒頭、ナレーションがこう入った。「彼の名は、槙野万太郎。移りゆく時代の中を、ただ植物を愛し、天真爛漫に駆け抜けました」。そういう人とわかっているが、どうも万太郎に乗っていけない。