新たな「三角関係」にびっくり

 『ひらり』は平均視聴率36.9パーセント、最高視聴率は42.9パーセント。「若貴ブーム」に沸いた当時の大相撲人気も追い風となった。

 「チーフディレクターの富沢正幸さんのお話では、もともとの企画ではお相撲がテーマではなかったそうなんです。ただ、朝ドラの場合、取材やリサーチに時間がかかるので、そこに労力を割くよりも脚本の内館牧子さんがよく知っている世界の話にしようと。

 そこでお相撲だったり、内館さんが13年間会社勤めをした経験(※)が生かされた」

(※)大学卒業後、三菱重工業に35歳まで勤務し、脚本家としてデビューしたのは40歳という遅咲き。大の相撲通としても知られており、2000年からは女性として初めて横綱審議委員会の委員を務めた。

 「みのりの役にも内館さんのいろいろなエピソードが入っているのではと思い、私も演じるうえで内館さんのエッセイをしっかり読もうと思いました。

 みのりが竜太先生に告白して、強引に両国診療所に寝泊まりする場面では “あそこはみのり、本気でやってたわね” って褒めてもらって嬉しかったです

念願かなって竜太と付き合うことになったみのりだが、「もんじゃデート」でも話題に詰まり……

──後半からは、みのりの「押しかけ女房」作戦が功を奏して竜太先生と付き合い始めるわけですが、なかなか関係が深まっていかない。そこに大学病院で竜太と同期の小林先生(橋本じゅん/当時の芸名は橋本潤)が登場して、もうひとつの三角関係になっていく。ああいうストーリー展開は台本が届いて初めて知るわけですか?

「そうです。私もびっくりしました(笑)。みのりが急にモテモテになって揺れるんですよね。“まだ揺れてる” とか思ったり(笑)。

 橋本じゅんさんは、渡辺いっけいさんの推薦で決まったそうなんです。『劇団☆新感線』時代の先輩後輩という関係で、いっけいさんが富沢さんに “いい人がいるから” と」

(※渡辺いっけいのインタビューはこちら:朝ドラ『ひらり』秘話。渡辺いっけいが「芸能人にはなれない」と思った瞬間と秘めていた「覚悟」)

 「私も “緊張しい” なんですけど、じゅんさんもかなりの緊張しいで(笑)。

 『ひらり』が初めてのテレビ出演だったそうで、“みのりはん”って言いながら、めちゃくちゃ汗かいて緊張していましたよ」

鍵本景子 撮影/松島豊