握手と頭脳戦が応酬する選挙シーン。
観終わると「あれ、選挙っておもしろいかも」
これまでの作品で落語、舞妓、能楽、海女と稀な職業をテーマにしてきた宮藤氏が、今回選んだのは政治。いや、正確には“選挙活動”がテーマだ。
東海林家は愛媛5区が選挙区となる、いわゆる政治一家。その長男として生まれた大志は、三世議員だ。権力を持っていた父親は数年前に急逝してしまった。地元で人気もない。絶大な人気を誇るゆいにあやかって、なんとか立候補できるような立場にある。そんな状況でも東海林家は選挙に向かう。
「勝ちたいんじゃない! 勝たなきゃ意味がないんです!!(中略)生きている意味がないんです」
事務所を開き、選挙カーだけではなく時には自転車や徒歩で愛媛を駆けめぐる。顔が売れるなら、披露宴で余興も行い、ゲートボールにも参加する。そしてずぶ濡れになってでも、最後の最後まで候補者の名前を叫び続ける。
「東海林大志、東海林大志をどうぞ、どうぞよろしくお願いいたします!」
時間も体力も財力も消耗するまで、スタッフ一丸となって向かう選挙。巫女の衣装を着て何度も選挙活動に登場したゆいも、終盤で選挙が面白くなってきたと言っていた。そんな『離婚しようよ』を観ていると、なんだか胸が熱くなってくる。サッカーのワールドカップを応援している、あの熱狂とはまた違った高揚感があるのはよくわかる。生まれてから散々見てきたような選挙活動に、こんな熱量がこもっていたとは知らなかった。
さすがクドカンマジック。そこにベテラン脚本家のスパイスも加わって『離婚しようよ』はとんでもなく輝かしい。
(文/小林久乃)
Netflixシリーズ『離婚しようよ』は2023年6月22日(木)よりNetflixにて全世界独占配信。
*解説後編→<Netflixシリーズ『離婚しようよ』見どころ解説#2>仲里依紗を悩ます松坂桃李、錦戸亮。まるでクズ男品評会!?
《PROFILE》
小林久乃(こばやし・ひさの)
エッセイ、コラム、企画、編集、ライター、プロモーション業など。出版社勤務後に独立、現在は数多くのインターネットサイトや男性誌などでコラム連載しながら、単行本、書籍を数多く制作。自他ともに認める鋭く、常に斜め30度から見つめる観察力で、狙った獲物は逃がさず仕事につなげてきた。30代の怒涛の婚活模様を綴った『結婚してもしなくてもうるわしきかな人生』(KKベストセラーズ)を上梓後、『45センチの距離感』(WAVE出版)、『ベスト・オブ・平成ドラマ!』(青春出版社)と著作増量中。静岡県浜松市出身