タイの“偽腕時計騒動”にびっくり。高級腕時計、つけたがる人って多いよね〜

 だいぶ前にね、タイのほうに行ったの。繁華街というか屋台がずらーっと並んでいるとこを歩いてたの。人が多くて一年中お祭りみたいなとこなんだけど、バッタもんも売ってるのよ。高級腕時計の偽物を売ってる店があって、店側も偽物ですって、悪気なく言ってるの。ひとつ3千円くらいだったかな。何も知らない僕が見ても偽物ってわかるくらいだから、逆に面白いよ。誰が買うんだよと思っていたら、現地のコーディネーターAさんが、「2万円出せば本物と見分けつかないやつが買える」って言うの。「ほんとに区別つかないよ」って自分の高級腕時計を触りながら。僕がそのAさんの高級腕時計に目をやると、「いやいや、これは本物だけどね」「ですよね」なんてやり取りがあって。

 次の日かな、僕とAさんとその部下と話してて、その部下が、「昨日どこ行ったんですか?」なんて言うから、そのバッタもんの腕時計屋の話したの。2万円で本物そっくりのやつ買えるって聞いたけど、買わなかったよってね。そしたら、その部下が「Aさんのそれも2万円で買ったやつですもんね」って。時って止まるんだね。カッコつけたかったんだね。偽物を本物と言って自分を大きく見せたかったんだね。Aさん、バツが悪そうな顔してたよ。今言うなよって顔。僕は糾弾しなかったよ。よくあるって言っちゃー変だけど、男ってそういうとこあるよね。

 男って、プライドの生き物だからさ。くだらないんだけど、高い時計をつけたいらしいのよ。らしいってのは、僕は、そこ、そんなになんだよね。こんなものに高いお金を出すのはバカバカしいと思っている派だから。昔、若手芸人でお金がないころに「Gショック」が流行(はや)っていたとき、似たフォルムの商品を千円で安いからって買ってつけてたら、それは「Xショック」という変なものだと、周りからさんざん笑われたけど、プライドが傷つくとかなかった。

 もう何十年も腕時計はつけてない。今はスマホがあるからいいじゃんって思ってる。ただでさえ、どこに行っても時間はすぐにわかるしね。ちなみに今、自分の部屋の時計を数えたら9個あったよ。全部ちょっとずつ時間ズレてるけどね。遅れないように5分早めてたりするからね。でも5分早めてるの知ってるから、結局一緒なんだけどね。

 同じ時計、同じ時間、高くても安くても機能は一緒なのに、こんなに値段に差があるなんて。腕時計にダイヤモンドを詰めすぎて、キラキラしすぎで何時かわからないものもある。本来の目的を失っているよね。でも高級腕時計だから、雨が降ったら、真っ先に腕時計をカバーしてるよね。あれだよね、合コンとかで女子は、男性陣の顔の次に腕時計を見るって言うもんね。そこで値踏みするんだね。本能だからしょうがないっか。

 テレビ見てると、高級腕時計を自慢してるタレントさんいるよね。さり気ないようで「どうだ!」感すごいね。自分は成功者だ、われは覇者だと言いたいのかな。いい感じには見えないけどね。でも自分でもそこんとこわかってるんだろうね。「高いやつを買えば長持ちするし、子どもにあげられるから」って言うタレントさんいるよね。タダの自分の見栄だろ。そんなんで視聴者が、いい話だね~なんて言うと思ってるのかね。どうせすぐ新しいの買うしね。ベルトに腕毛が挟まって「痛っ!」ってなれ。

 もしかして、高級腕時計なんていらない理由を並べて、妬(ねた)み嫉(そね)みを言うことで、自分が高級腕時計を所持できない負け組であること自覚しないように脳が働きかけてるのかな。でも本当に興味ないんだよな。もしするとしたら、スマートウォッチかな~。高級腕時計に比べたら安いし、使い勝手がよさそう。健康管理とか面白そうだしね。ん~でもやっぱり腕時計はしないかな。その理由はイラストのタイトル「ベルトの穴、ちょうどいいとこないね」なんだよね。ベルトがきついからって、1個ずらすとゆるいしイライラしちゃうから、やっぱいらない。

(文・絵/つぶやきシロー)


【PROFILE】
つぶやきシロー ◎1971年3月10日、栃木県生まれ。お笑いタレントや俳優として活動するかたわら、2011年からは小説も執筆。2021年には、著書『私はいったい、何と闘っているのか』(小学館刊)が安田顕主演で映画化された。2022年4月、新著『こんな人いるよねぇ~──本を読んでつぶやいた』(自由国民社刊)を上梓。また、2009年から公式Twitterでほぼ毎日「あるあるネタ」をつぶやき続けて大人気に。フォロワー数は99万3000人を超える。(2023年8月現在)
公式Twitter→@shiro_tsubuyaki

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