3月12日は、くまモンファンにとっては大事な日。そう、くまモンの誕生日だ。毎年、多くの「お友だち」が全国から熊本へと駆けつける。ご当地キャラも、子どもも大人もだ。2023年はなんと、2日間で9万人もの来場者を記録した。
華麗なるバチさばきに“王子様姿”での挨拶、はじめからノリノリのくまモン!
2023年は11日、12日の2日間で、会場はくまモンの活動拠点である「くまモンスクエア」と、繁華街の中心地にある「花畑広場」。屋外での開催は6年ぶりだというが、12日は雨予報も出ていた。飲食ブースも数多く出ているため、天気だけが気がかりだった。
今年のテーマは、ズバリ「祭り」だ。11日の花畑広場でのオープニングは、法被(はっぴ)にハチマキ姿のくまモンとくまモン隊による、宇土天響太鼓のみなさんとのコラボ。大きな和太鼓を見事に打った。バチさばきが美しく、くまモン隊との息もバッチリだ。
12日はステージでの演奏のあと、桶太鼓を持って客席を練り歩いた。こちらも見事にきれいな音で叩いていた。くまモンは毎年、誕生祭にはさまざまなことにチャレンジした結果を披露してきた。今年の和太鼓もよほど努力を重ねたのだろう。
そのあとは蒲島郁夫・熊本県知事のご挨拶。蒲島知事は「王子様」の衣装をまとったくまモンと手をつないで登場! くまモンの魅力と、これからのくまモンランド化構想を説明し、「今後もますますくまモンが活躍することを信じてやまない」と締めくくった。
地元のキャラとしては、鞠智(きくち)城のさきもり・ころう君、宇土市のうとん行長しゃん、人吉温泉観光協会からヒットくん、大津町のからいもくんが登場。さらには近隣の福岡県大牟田市からジャー坊、島根県のしまねっこ、群馬県のぐんまちゃん、栃木県佐野市のさのまる、計8人が駆けつけた。さすがくまモンの誕生祭だけあって、有名どころが顔をそろえる。
大勢のお友だちとわちゃわちゃするのを見るのも、大きなイベントの楽しみのひとつ。さらにお友だちは会場内で撮影に応じたり、楽しいPRステージを見せてくれたりもした。
野球選手、ディレクター、駅長……変化自在のくまモンに会場は惚れ惚れ
誕生祭ではモンコレ(くまモン・コレクション=ファッションショー)も開催された。昨年、熊本市でおこなわれた花博のときのディレクター姿、サッカーの日本代表ユニフォーム、さらには熊本出身の村上宗隆選手とおそろいの東京ヤクルトスワローズのユニフォームなどでも登場。ファッションに合わせて寸劇も繰り広げられた。
また、くまモンステーションの駅長服、商業施設「サクラマチクマモト」内にあるくまモンビレッジでの衣装、くまモンポート八代の船長服も一挙に披露された。
コックさんの衣装では長い帽子が前に傾いて「リーゼント状態」になり、会場の爆笑を誘う。その姿でころう君と、どちらが早く肉を焼けるか対決。ここは、ころう君に軍配が上がった。
そして誕生祭でしか見られない「くまモン体操 初音ミクバージョン」も。くまモンとくまモン隊の息の合ったダンスに、思わず涙腺がゆるむ。日ごろから密にコミュニケーションをとっているからこそ、こんなふうにピッタリ合うのだろう。ダンスのクオリティも年々、上がっているように感じられる。くまモンがこの世に登場して13年。その歴史と、くまモンにかかわってきたすべての人たちの思いが、この初音ミクバージョンの一糸乱れぬダンスに表現されているような気がしてならない。だから自然と泣けてくる。
「火の国くまもとマスク」が大活躍! 終盤のダンスでさらにヒートアップ♪
誕生祭にゲストはつきもの。熊本城おもてなし武将隊との演舞や、ケロポンズとのコラボステージも楽しかったが、11日はなんと、ゲストステージにくまモンの友人といわれているレスラー「火の国くまもとマスク」が登場。ここでのコントが大爆笑だった。くまモンスクエアが、熊本城おもてなし武将隊とともに出張PRをしようとしたところに、黒いマントを羽織った怪しい“ワルモンシスターズ”が現れ、ステージを乗っ取ろうとする。みんなで「マスク、マスク」と助けを呼ぶと、チャララーンと音楽とともに登場したのが、火の国くまもとマスク。
マスクとワルモンシスターズの闘いの火ぶたが切って落とされる。強いはずのマスクが、ワルモンシスターズに倒され、棒でぐりぐりと痛めつけられていく。じっと耐えるマスク。そして機を狙って、棒を真っぷたつに折り、反撃を開始。最後はマスクがふたりをやっつけて反省させるのだが、ワルモンシスターズが秀逸だった。「おーっほっほっほ!」と高らかに傲慢(ごうまん)な笑い声を響かせる「悪いオンナふたり」のやりたい放題に、客席からは爆笑の連続。演技のうまさがハンパない。この対決、ぜひまたいつかやってほしい。
花畑広場でのステージ最後は、「みんなでダンシンぐま」と称して、「カモン!くまモン音頭」をくまモンとくまモン隊、ゲストのお友だちが踊りながら練り歩いた。来場者一人ひとりと目を合わせながら進んでいく、くまモン。気持ちのいい屋外で、思い切り歌いながら踊っている。見ている私たちも思わず身体が動いてしまう。楽しい一体感が生まれた。
そしてアンコールは、もちろん「くまモン体操」だ。会場の子どもたちも立ち上がって踊っている。誰もが知っているこの曲は、やはりくまモンの原点といえるだろう。天気は最後までもった。やはり稀代の晴れ男なのだ、くまモンは。
スクエアでもハジけまくったくまモン。最後はみんなの愛に囲まれて──
一方、くまモンスクエアでも、2日にわたって記念イベントやくまモンとの撮影会などがおこなわれた。わっしょいわっしょいと大きな祭りの団扇(うちわ)を振りながらの登場もあった。来場者によるハッピーバースデイの歌のプレゼントには、くまモンも大喜び。くまモンは花畑広場とスクエアを行ったり来たりした2日間となったが、いつでも全力、テンション高く頑張り続けた。
また、11日夕方、スクエアでは設立されたばかりの公式ファンクラブ「第1回FANSサミット」が開催された。7~8人のグループを作って、くまモンに望むことなどを話し合い、発表し合った。今後もこうしたファンサミット、集いが開かれていくはずだ。
このFANSサミットに合わせて(?)の、くまモンの衣装が……なんと、赤い褌(ふんどし)! テーマが祭りだけにぴったりの衣装で、なおかつ、これほど赤ふんが似合う人も珍しいのではないだろうか。黒いボディに赤ふんが、なんともおしゃれ。後ろから尻尾がのぞくのも可愛い。魅惑のボディに、さらに男の色気がにじみ出ていた。本人が若干、照れているように見えたのは穿(うが)ちすぎだろうか。
2日目のラストは、スクエアでハイタッチ会がおこなわれた。思えばこの3年間、くまモンとはハグもハイタッチもできていない。コロナ禍前は、いつもハグハグ~としてくれていたのに。あのハグが恋しい、せめて手のひらをぴったりつけてハイタッチだけでもしたい。そんなファンの気持ちを察したくまモンが、ハイタッチ会をしてくれたのだ。
部長室を開放してのハイタッチ会。右側の扉から入って、くまモンとハイタッチをして左側の扉から出る。入るときはみんなニコニコ顔、なのに出てきたときは涙、涙となっていた。3年ぶりのハイタッチに感極まった人が続出したのだ。
くまモンと手を合わせたときの、あのもふっとした感触が、どんなに私たちを元気づけてくれるか、明日への活力になるか。それはくまモン自身が想像している以上なのではないかと思う。それほどくまモンの存在は偉大なのだ。
涙、涙のハイタッチ会が終わり、2日間の祭りは幕を閉じた。スクエアの舞台にファンからのプレゼントが飾られ、くまモンはそれらを見ながら感慨深げに写真におさまった。
実は、今のくまモンスクエアでの誕生祭はこれが最後。というのも’13年に開設されたスクエアは、4月9日をもっていったん閉館、7月にリニューアルオープンされるからだ。来年はここで、どんな誕生祭が繰り広げられるのが楽しみだ。
「サプライズとハッピーを届けることができたかモン?」と言いたげなくまモン。もちろんである。ファンの弾けるような笑顔と、感動の涙がそれを何よりも物語っている。
(取材・文/亀山早苗)