ブルース・リー出演の映画作品のパロディを演じ切り、衣装や小道具まで手作りで完全再現している親子がTwitterで話題になっています。それを手がけているのが、“ヌンチャクガール”こと女優の森累珠(もりるいす)さん(以下、森さん)と、お母さまの森田ヨーコさん(以下、累ママ)。動画制作の秘話や苦労したエピソード、さらには気になる親子関係について伺いました。
(おふたりの動画制作へのこだわりや、2022年8月に再現動画が劇場公開された秘話は、インタビュー#1で詳しく紹介しています→記事:“ブルース・リー愛”が止まらない……!親子で熱演の完コピ動画が話題──“ヌンチャクガール”こと女優の森累珠が伝えたいこととは)
ファンからもらったトラックスーツがきっかけ
──ブルース・リーの映画作品の“完全再現動画”。YouTubeチャンネル『るいちゅーぶへの道』で、あのコンテンツの配信を始めたきっかけは何ですか?
森さん「以前から、映画『死亡遊戯』の衣装である黄色のトラックスーツを着たいと思っていたのですが、身体が小さく手足の短い私には、リー様のあの細くて美しいスタイルのようには着こなせないと思い、ほぼ諦めかけていました。そんなときにファンの方から、子どもサイズのトラックスーツをいただいたんです。それが自分の身長にぴったりフィットして、すごくうれしくなり、お母さんに相手役をお願いして撮影を始めたのがきっかけです」
──再現動画を拝見すると、いろんな場所で撮影されているようですが……
累ママさん「そう見えるようなんですけど、基本的にふたりで撮影するときは、自宅の7畳の和室を使っています。普通の部屋として使っていたのでクローゼットなども置いてあり、実際使えるのは6畳ほどなんです」
森さん「リー様の映像をパソコンで見ながら制作しているので、あれを外でやったらすぐに日が暮れて撮れなくなってしまいます。森の中や決闘場などの屋外のシーンであっても、それっぽい背景に見えるように作り込んでいます」
──おふたりが選ぶ、いちばん苦労したシーンはどこですか?
森さん「私は、『燃えよドラゴン』で敵役・ハンとの鏡の間での対決シーンですね。映画では鏡を約8000枚使用したらしいので、これは不可能だなと思っていました。でも、おばあちゃんの家から借りたり、量販店で購入したりして、いろんなところから鏡をかき集めた結果、映画で使ったおよそ1000分の1の枚数で事足りました。撮影担当の私が鏡に映り込まないように、アルミホイルをかぶってカメラを回すなどして、創意工夫も凝らし、なんとか作りあげることができました」
累ママさん「映像は6分ほどですが、制作日数としては準備期間を入れると約3週間は要したと思います。その他にも、『燃えよドラゴン』地下侵入編の動画では、司令室のセットを作ったり、段ボールをくり抜いて窓もしつらえました。撮影期間中は、和室の壁に等身大の自分の顔パネルを貼っていたので、和室に入ったときに、そのことを忘れてびっくりしたこともありました(笑)。わが家に来るお客さまは撮影していることを知っているので、来客のときも小道具をそのままにしていることが多いですね」
森さん「撮影で破った障子もそのままですし」
累ママさん「私がいちばん大変だったのは、『死亡遊戯』で最後の宿敵だったカリーム役を演じて、ギックリ腰になったことです……」
森さん「あれは、つらかったよね。お母さんが私を持ち上げるシーンで、“ボキッ“て音がして。何かなと思ったら、お母さんが“いたたたあ! 腰やった”と、叫んだんです。今もこのシーンはYouTubeのNG集に残っています(笑)」
累ママさん「シリアスなシーンなのに1回目で笑ってNGを出しちゃって。2回目に撮影したときにギックリ腰に。再び撮り直したものの、あまりの痛さに笑いがこらえきれなくて。結局OKシーンも、笑っていると思います」
森さん「撮影が終わって、それでもお母さんはお酒を飲んでたんですけど、あまりの痛さにその日はアフロをつけたまま衣装も着替えず、もだえながら寝ていたのを覚えています(笑)」
母の子どものころの夢が今はふたりの夢になる
──おふたりで楽しそうに作っていらっしゃいますが、そんなにつらいこともあったんですね。反対に、うまく撮影できたシーンはありますか?
森さん「劇場でも公開された『ドラゴンへの道』チャックノリス戦に出てくる、猫の熱演ですね。タレントの猫にオファーしようか迷っていたんですが、“私たちらしさって何だろう?”と考えたときに、これまで私以外の役はお母さんが演じることにこだわってきたので、やっぱり“ここもオカンだな”と思い、オファーしました」
累ママさん「最初、拡大コピーで猫のお面を作ったんですが、映像では猫が向きを変えるので、このままでは近い映像にならないなと思い、顔は口の部分だけ開けて紙のかぶりものにして、胴体は服をまとうことにしました」
森さん「ただ、配信するまでは“本当に大丈夫かな”という不安はありましたね。でも公開すると、みんな“面白い!”って言ってくれて。お母さんと一緒に喜びました……!」
──美術、衣装、その他のキャストすべてを累ママさんが精力的に担当されています。特にさまざまな役柄の髪形や衣装にまで徹底してこだわり、演技する姿が印象的です。もともと演じることには興味があったのですか?
累ママさん「私も子どものころは、芸能界に憧れを抱いていたので、若いころはエキストラやモデルとして活動していました。それから香港にどハマりして向こう(香港)でも活動していました。でも結婚して、子どもを産んでからはしばらく専業主婦をやっていたんです。今は、子どもがスカウトされたタイミングで、私も芸能活動を始め一応、私も今は現役なんです」
──昔はモデルなどをやっていらしたのに、今は胸毛をつけて男性役なども演じていらっしゃいますが、そこに抵抗はなかったのでしょうか?
累ママさん「年齢を重ねてきたことで、抵抗はなくなりましたね。それは自分の中では新たな発見です。演じるのが好きなんでしょうね」
森さん「お母さんはもともと出たがりなので、むしろ全部の役をやらせないと怖いですね(笑)!」
プライベートでは親子? 友達の一面も
──親子で動画を作っていて、よい点や、うまくいかない点はありますか?
森さん「“楽しんで作ること”。この共通認識は阿吽(あうん)の呼吸でとれているので、非常にやりやすいです。動画は手作り感満載かもしれませんが、その分ディーテルにこだわって作っています。一方苦手な点は、お互いなあなあな関係になってしまうところです。事前に動画の公開スケジュールは決めていますが、ふたりとも気分が乗らないときは、早めに切り上げて好きなビールを飲んだりすることもありますね」
累ママさん「そこがふたりの甘いところですね(笑)。もちろん、撮影の遅れた分を取り返すために、次の日はがむしゃらに頑張るんですけど」
──お話を聞いていると、友達みたいな関係ですね。
累ママさん「“親子じゃない”ってよく言われます。私はYouTubeチャンネル『るいちゅーぶへの道』のおかげで、映画の舞台あいさつに立てたり、こうしてインタビューを受けたりできるので、娘には感謝しています。ですから、仕事では娘というよりも先輩として見ていますし、仕事では名前ではなく、森さんと呼ぶことが多いですね」
──普段の関係はどうですか?
累ママさん「そこは友達の関係に近いでしょうか。ふたりとも神社をお参りするのが好きなので神社巡りをしたり、夜は一緒に映画を見たりします」
森さん「香港映画だと非常に話が合うんですが、それ以外の映画だと好みは分かれますね。それぞれの感想や考察を言い合ったりしています」
──そこは親子ですね。
森さん・累ママさん「そうですね(笑)」