ルーティンでも"小さな変化"が見つかれば、それは遊び

──不確実な行動って、年を取るほど選ばなくなりますよね。

「そうかもしれませんね。でもこれはあくまで僕の生き方なだけであって、幸せは多種多様ですからね。

 例えば“今日は朝から筋トレに行って、スタバのコーヒーを片手に会社に向かい、10時から19時まで良い仕事をして……今日は完璧な一日だった”という、一つひとつの行動に"意味"を持たせる喜びもあると思うんです。それも幸せの形ですよね

 でも僕は昔から“偶然何かを見つけた”という喜びを見出すタイプでした。実は高校生のときにバスの運転手になりたかったんですよ。毎日のように同じルートを走行する中で、ちょっとした差異があるじゃないですか。“道が混んでるなぁ”とか“花が咲いてるなぁ”とか。そんな発見が楽しくて、高校生のとき同じ路線のバスに乗ってたんですよね。

 だから、ルーティンワークだとしても、毎日の小さな変化を喜べるならば、それは遊びだと思います。でも変化を楽しめないと想像力は鍛えられない。例えば電車が止まっただけで怒りが爆発しちゃったり、仕事が進まないことにムカついちゃうようになる。どんどん意味のない遊びを受け入れられない人間になると思うんです」

──なるほど。手塚さん自身が歌舞伎町で飲むときに意識していることってあるんですか?

いかに能動的に偶然性を生み出すかを考えていますね。だから飲む店や時間を決めるのは好きじゃないんですよ。ノープランでふらっと店に入って、そこで偶然知り合いと会ったら数珠繋ぎに他の店に移動したりね。海外に行くときも同じで、下調べはしません。だから僕、メキシコやペルーも宿も取らずに行きました」

──それはすごいっすね(笑)。

「でも本来、人間って“意味のないことをして、心地を楽しむ生き物”だと思いますよ。僕はいま2歳の子がいます。小さな子って、何度もグルグル回っては倒れたり、お人形を寝かしつけたりしますよね。

 もちろんその行動に意味なんてない。でもすごくうらやましいです。時間やお金などの制約がなくて、真に自由で幸せな状態だと思いますね。僕もお酒を飲んで酔っぱらっているときに最も自由を感じます」