東海地方を中心に活動する、東大卒&京大卒&名大卒による超高学歴アイドルグループ「学歴の暴力」。東京大学の工学部でシステム創生学を学んだなつぴなつさんと、京都大学の農学部で藻の研究にいそしんだえもりえもさんによって2021年6月に結成され、2022年5月、名古屋大学情報文化学部出身のあずきあずさんが加入しました。3人とも平日はそれぞれ別の仕事をしながら、休みの日はライブやイベントなど、「学歴の暴力」としての活動にささげています。
『fumufumu news』では、2022年2月に彼女たちへのインタビューを敢行。学歴を全面に押し出したアイドル活動を始めたわけや、高学歴ならではの痛みを伺い、彼女たちの独特な感性や、抱えている悩みの深さに強くひきつけられました(記事:「勉強以外、なんの取り柄もない」東大卒&京大卒のアイドル『学歴の暴力』が歌う高学歴の苦悩)。
彼女たちの胸の内をもっと覗(のぞ)いてみたい、という思いで連載コラムの執筆を依頼したところ、ありがたいことに快諾。毎回テーマを設定し、メンバーそれぞれの“自分らしさ”を生かし、感じたことを文章にしてもらいます。
第1回は、なつぴなつさんとえもりえもさんが、ゴールデンウィークに行った神戸旅行の思い出や相手への思いを明かしてくれました(記事:超高学歴アイドルユニット「学歴の暴力」、東大卒と京大卒“はじめての2人旅”がもたらしたもの)。
続く第2回では、あずきあずさんが単独で初執筆! 個性派ユニットに加わり、東大卒女子&京大卒女子とともに活動した印象を、自己紹介を交えてつづってくれています。
「学歴の暴力」って、結局どんな感じ? byあずきあず
名大卒の私、あずきあずは、2022年5月から東大卒のなつぴなつ・京大卒のえもりえもで結成されたアイドルユニット「学歴の暴力」のメンバーとして活動している。
このユニット、名前からも分かるとおり、いろんな意味で話題性が高いグループである。例えば、特徴として以下が挙げられる。
「東大卒・京大卒で結成」「普段は会社員」「副業禁止のためチェキ無料」「旧帝大卒限定という学歴フィルター付きメンバー募集」……。
インタビュー記事が出れば、「学歴」と「アイドル」の結びつきが意外なのか、学歴論の議論のネタにしていただいたりと、王道とはまったく違う路線でフォロワー数を増やしている。
2か月間の活動を経てわかった、えも&なつぴの「段取り力」
私はまだ約2か月間しか活動していないのだが、もうちゃっかり半年くらい活動しているような気持ちでいる。でも、一方でまだまだ人ごとのようなところもあって、半分メンバー、半分オタクとして学歴の暴力を楽しんでいる。
2か月という短い期間をこんなにも長く感じたのは、それはもう、“2人が行動力の鬼だから”としか言いようがない。えもちゃんは、私たちが出演できそうなめぼしいイベントを、ありとあらゆるところから見つけてきてくれるし、なつぴちゃんは、脳に直接通知が届いてるのかってくらい、すごい速度で返信をくれる。
次に何をするか、何か月後には何をしていたいか、そのために今、何をすべきか……。
社会人に求められる能力のひとつである「段取り力」。二人はこれを、なんということもなく使いこなしているので、一般人の何倍ものスピードで生きているのだと思う。前に、えもちゃんに「すごい意思決定力とスピードだね」と言ったら、「え、ゆるゆるゆっくりやってると思ってた!」と返ってきた。彼女にとってこれはマックス速度ではないらしい。恐ろしい。
メンバーとの会話に「なんでこの二人は漫才師じゃないんだろう」
学歴の暴力は、いつもトークをほめてもらえることが多いのだが、そのトーク力は楽屋だろうとステージ上であろうと変わらない。むしろ“楽屋の方が面白いのでは”というくらい、私はいつも笑っている。
えもちゃんは傘を忘れてきてしまったときに、「傘に関してはキャッチアンドリリースの精神で生きているから」と言い放っていたし、なつぴちゃんはそんなえもちゃんに、いつも的確かつユーモアのきいた返しをしている。「なんでこの二人は漫才師じゃないんだろう」と思うくらい面白い。
私はそんな二人のトークを聞いて笑っていることで精一杯で、気がついたら会話が終わっている。自分ももっと喋れればと思うけれど、でも「このテンポのよさを壊したくないな」とも思ってしまう。だって、私は話をする速度が普通の人の0.8倍速だし、滑舌悪くてウィスパーボイスなので、おそらくノイズみたいになってしまうからだ。多分、テキストで話しているほうが速度が速い。私だけ、電光掲示板持ち込みでステージトークしようかしら……。
個性があふれまくる、えも&なつぴのツイートから見えてくること
Twitter上での二人と、実際に会う彼女たちは少しだけ、違う。だけど、Twitterで知ることができる彼女たちも大好きだ。
なつぴちゃんは、いつもちょっと“強め”なツイートをする。
物議を醸すようなツイート、自分の気持ちを吐き出したツイートなども多いが、どんなツイートも「なるほどな」と思ったり、共感できたりする部分がある。自分の胸の内を代弁してもらったかのような、そんな気持ちになる。
劣等感と学歴厨のツイートには特に共感した。
私はなつぴちゃんほどの学歴はないが、本当に誇れるものは名大卒ということ以外、何にもない。学歴に縋(すが)って就職し、学歴に縋って周りからの信頼と友情を手に入れて生活している。これがなかったら今ごろ、のたれ死んでいると思う。
「東大を卒業して歌もトークもうまいなつぴちゃんでさえも、こういう感情になるのか」と、少し救われた気持ちになる。そして、やっぱりツイートの言葉選びが強くて、こういうところが好きだなって思いながら、ふふっと笑ってしまう。
えもちゃんは、“ここぞ”というツイートをする印象がある。
わずか2行で誰にでも面白さが伝わってしまうツイート。さすが、万バズ(※)の神様は違うなと思っている。
(※ 万バズ:指標はさまざまだが、主にひとつの投稿に対する「いいね」の数が1万を超える人気ツイートを指す)
特に私は「SABONの匙で粥を食う女」のツイートがお気に入りだ。
コスメブランド『SABON』のボディスクラブ用のスプーンでお粥を食べてしまった、えもちゃん。私が書くとこんなに長くなってしまうのだけど、「匙」とか「粥」とか端的な言葉だけで面白おかしく表現できる語彙力を持っているのがすごい。でもそれ以前に、やっぱりそのスプーンで食べる発想に至ったえもちゃんの奇才ぶりが好きである。えもちゃんの思考は私が知らない世界、触れたこともない世界に連れていってくれる。
「やりたいことを求めてさまよっていたら、学歴の暴力とパン屋に」
最後に、おまけ程度に私のことも書けたらなと思う。
私はアイデアを出すのも好きなのだが、基本的に誰かが考えたことを実現する、現実に起こしていく、という作業のほうが好きだ。でも、言われたことだけをやっているのは苦手。だから、こうやってアイデア力も段取り力もある2人のもとで、作業しながらラフに意見を言えるのは、願ってもない状況だ。
パン屋への就職もそんな視点で選んだのかなと思う。小学生のころから、母とショッピングモールに行った際には、必ずパンを買っていた。父たちへのお土産と言いつつ、帰りの車で全部ひと口ずつ食べて、「美味しい、楽しかった」と感じる時間が大好きだった。
今は、その思い出のパン屋のバックオフィスで働いている。大切な思い出を作ってくれたパン屋の社長は、「職人の労働環境の改善に力を入れ、食品業界でのIT活用を進めていく」と語っていた。大学でIT活用について研究していた私は、この会社で社長の理念を実現させていくことこそが天職だと思った。
常に、自分がやりたいことを求めてさまよっていたら、いつの間にか学歴の暴力とパン屋にたどり着いてしまった。私には段取り力も面白いトーク力もないが、こうやって自分の求める場所につけたのだから、運だけはあるのだと思う。
あと、なんの計画もなしに飛び込めることだけは、唯一誇れるところかなと思う。「人生、明日死ぬかもしれないのだから、面白いことをやっている日が多いほうがいい」と今のところは思っている。とはいえ、この考え方もあと数年したら、「なんて甘い思考だったんだ」と思う日がやってきて、何か後悔したり、新しい考え方に巡りあったりするのかもしれないが、今のところは刹那主義的に生きていければと思う。
(文/「学歴の暴力」あずきあず)
◎「学歴の暴力」Twitter→@violenceofgkrk
◎えもりえもTwitter→@emofairystar1
◎なつぴなつTwitter→@natsupikkk
◎あずきあずTwitter→@azuki__info
◎「学歴の暴力」YouTubeチャンネル→https://www.youtube.com/channel/UCQA_7HGBG5Ezz_gsAlXbIsg