多種多様な企画があるYouTubeの中でも、ゲームをプレイする動画をUPするのは鉄板と言われるほどの人気。とくに、お笑い芸人によるゲーム実況は高い再生数を叩き出していますが、その元祖、本家とも言えるのが、”ゲーム芸人”や”ファミコン芸人”と呼ばれるフジタ氏。サンドウィッチマンの事務所グレープカンパニー所属の彼を知っている人も多いでしょう。
今回はフジタ氏が、これまでに出演したYouTube動画企画で反響が大きかったものを「フムニュー」のために5つ、ピックアップしてくれました。まずは、”ゲーム芸人”となるまでいきさつを聞きました。
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──所蔵しているゲームの数が3万本を越えるそうですね。それは大人になってから集め始めたんですか?
フジタ(以下、「」内はすべて同)「小学校に入学する少し前に、母が脳の病で倒れて亡くなったんですね。その後に寂しくなった父も外に恋人を作ったから、家に帰ってこなくなって。だから、小学1年生の後半から、ずっと1人で生活していたんです。事業をやっていた父が、生活費として毎週3万円という小学生にはものすごい大金を置いていってくれていたので、それでファミコンのソフトを買いまくって夜遅くまでやってました」
単にファミリーコンピュータが好きで”ファミコン芸人”なのではなく、ファミコンとともに育ってきたのだ。
「誰に注意されることもないから何時間でも続けてやって。おかげで誰よりもうまくなりまして。しかも親がいない家だから、友達も遊びに来やすかったと思うんですよね。『スーパーマリオブラザーズ2』って死ぬほど難しいので、小学校2年生でクリアできる人は、ほかに誰もいなかったのに、僕だけできるし。そういうのもあって男女両方から人気はありました」
大人になってタクシードライバーをやったりしているときも、お笑い芸人になってからもゲームの収集を続けた結果、というか結晶であり、彼の場合は人生そのものと言っても過言ではないだろう。
「月々、保管や維持だけで40万円くらいかかっていますね」
きれいにというか、崩れないのが不思議なくらい奇跡的にソフトなどが積み上げられた部屋を見せたり掃除する動画もYouTubeで公開されており、人気。そりゃ、見てみたいもん。
「自分のやつよりも学研のチャンネルへの出演が先だったんですけど、そこで結構な再生回数があったんですよね。それを見た漫画家のピョコタン先生に”絶対やればもうかる”と。だから自分のチャンネルも立ち上げて、実際にもうかったんで、すごいなと思いますけどね(笑)」
では、フジタが自ら選んだYouTube動画ベスト5を解説してもらいましょう。
《その1》超難易度『スーパーマリオブラザーズ2』プレイ&解説の再生回数は125万超
「『スーパーマリオブラザーズ1』って簡単じゃないですか、基本的には。キノコとかフラワーを取っていけば誰でもクリアできるみたいな。『スーパーマリオブラザーズ2』ってクリアできない人はどうやってもできないと思うんですよ、難しすぎて。それを踏まえてなのか、『1-1』から無限アップができるシーンがありますし。これを学研のチャンネルでノーパワーアップ、ノーミスでクリア」
そう、彼は本人のチャンネル以外にも引っ張りだこの存在なのだ。けれどもそればかりでは続かない。やっぱり彼だからこそのウリがあるのが大きい。
「ゲームのスーパープレイって、練習の時間がかかるわけですよ。ほかにもいろんな人もアップされてますしね。だから中途半端なものだとあまりよくないし。プレイしているところの実況や解説だけじゃなくて、レトロゲームのパッケージだったり、それを開封する様子だったりは、ビジュアルがあるから見てられる部分もあるんですね。おかげで最近は購入動画と開封動画に寄ってますね。再生回数もいいですし」
《その2》最高額ソフト150万円をお買い上げ
「NEOGEO(ネオジオ)というハードは有名ですよね。それの『ちびまる子ちゃん』(96年発売)を買ったことですね。そもそも、NEOGEOのカセットって定価が3万円とか4万円して、それが『ちびまる子ちゃん』でターゲットが低年齢になり、当時の流通量からして少なかった。これはオークションとか特別なのを除いて今、市販されているソフトで、いちばん高いと言っても過言ではない。某ショップでは200万円でやりとりをされていて。
それがあるとき、駿河屋さんの通販でちょっと安めの150万円で出ていて。ただ実物を見ることができないから手を出さなくて。けど、別の企画で駿河屋さんの通販部の静岡の倉庫に見学に行ったときに置いてあったんすよ。とはいえ150万円ですから、いきなりそこで買うこともできず……。その日はあきらめて。
秋葉原にも駿河屋さんがあるんですけど、そこにもよく行ってまして。そしたらね、エリアマネージャーさんが、“フジタさんが欲しがっていたんで、うちに持ってきました”って言って、秋葉原の店舗に置いてあったんすよ、それが。なんか買わざるをえなくなったみたいなことですかね」
──外堀を埋められたんですね(笑)。思い切りましたね。ちなみに年間、もしくは月間でも構わないですけど、ゲーム購入に充てる費用ってどれぐらいですか?
「平均すると月20万円ぐらいだと思うんすけど。でも今年『ちびまる子ちゃん』もそうだし、それとは別で150万円の福袋も買ったし、500万~600万円はもう買ってると思うんすよね」
しっかりと仕事につなげて活用しているため、赤字にはなっていないもよう。けれども過去いちばんやばいときは、
「カードとかの借金で1000万円を超えたことがある」
というから恐ろしい。
《その3》150万円福袋を購入&開封
「これも秋葉原の駿河屋さんで購入したんすけど、正月でもないのに150万円の福袋があって、さっきのエリアマネージャーさんがまたいて、すすめられて。レアなゲームがたくさん、しかも箱付きで入っているんですが、中でもよかったのは、85年の『エグゼドエグゼス』っていうゲームの非売品のゴールドステッカーというのがあって。普通に買うと30万~40万円するものです」
コロナ禍の巣ごもり需要の影響か、全体的にファミコンソフトも高くなっているという。
「箱がきれいなものって、より少ないんでより高くなるっていう。例えば『ドラクエ』とか『ファイナルファンタジー』『スーパーマリオ』とか、あれだけ売れて何百万本って世の中に出回ったものでも、箱がきれいだと高かったりするんすよね」
これを読んでいるあなたも実家の押し入れをチェックしてみては? ちなみに福袋動画は3回に分けられているが、そのうち1つの再生数は100万超。フジタ氏本人のチャンネルで、もっとも反響があったという。ほかにも”お金を使った動画”はウケるみたいで、次はこれ。
《その4》マネしちゃダメ! 偽物? 本物? 18万円したソフトを開けてみた動画
「ファミコン『オバケのQ太郎 ワンワンパニック』は通常版だと黄色いんですが、大会の上位100名に配られた“金”のバージョンが貴重なんです。美品であれば40万~50万円くらいが相場」
──このゲームの大会なんてあったんですね。そっちもオドロキです。
「でも僕はね、これを18万円で買ったんです。オークションで」
──え? 安いですね。
「偽物も多いんです、これ。石川県から発送しますって書いてあったんですけど、実際はタイから届きましたし。しかも、状態も未使用に近いって書いてあったのに、カセットをこじ開けた跡もあって。だから出元もコンディションも説明がうそで。
真偽を確認するために、開けて中の基盤を見るみたいな動画にしたんですけど、そこに反響があったと思うんですよね。スーファミとかだとネジですぐ開くじゃないですか。ファミカセってうまく開けないと爪が折れるんです。開けるのに結構コツがいるんですよね。だから本来、貴重な“金”のバージョンを開けるの、怖いじゃないですか。それでも開けちゃったっていうことに価値があったのかなと」
ちなみに結果は、
「有識者というか詳しい人に聞いたら一応、本物であると」
《その5》事務所チャンネルでサンドウィッチマンのネタ動画に次ぐ人気
「サンドウィッチマンのネタ動画って1000万回とか、ありえない再生回数いくんですが、グレープカンパニーのチャンネルで、その次に数がいったのが僕の『アトランチスの謎』というファミコンソフトをやるやつで。ライブのときにプレイしている様子ですね。
このタイトル、当時好きな人はもちろんいたんですけど、操作性も悪いし、100面もあるし、ワープゾーンがあるけど何がなんだかわけわかんないし。けれども僕はテレビでプレイする機会が多かったんですね。ネタ的な意味で。それで認知度があがったと思うんですけど、ファミコンミニにも収録されたんです」
──メジャータイトルがほとんどのアレに入ったんですか? リアルタイムではそこまで大ヒットとか大人気だったわけでもなかったものが。
「サンソフトというメーカーの作品なんですけど、『いっき』とか『水戸黄門』、後期だと『星のカービィ』より面白いとすらいう人もいる『ギミック!』とかも同社です。だから『アトランチスの謎』はふつうは出さないはずなんですよ、ファミコンミニには」
170万再生を超えるこちらの動画を見て、久々にファミコンをやりたくなったあなた。大人になった今なら『アトランチスの謎』を解けると思っていますか? きっとすぐに「もういいぜ!」と投げ出すことでしょう。マネできそうで決してマネできないことを続けているフジタ氏が今後やりたいことは?
「コレクションをもう少し見やすい形にしたいですよね。部屋に雑多な置き方になってしまっているのを、どこか外に持っていって展示して、みなさんが見られるように開放したいなと、ゆくゆくは。まず、自分の部屋の中をどうにかしないといけないんですけど」
何よりも難易度は高かったりして。
(取材・文/相良洋一)
〈PROFILE〉
フジタ ◎1977年7月21日生まれ。東京都出身。お笑い芸人を目指して高校を中退し、養成所に入るもののフェードアウト。タクシー運転手などを経て、芸人としての活動を再開。ゲームを扱うネタでブレイクする。所蔵するゲームソフトは3万本超。著書に『ファミコンに育てられた男』(双葉社)がある。
公式Twitter=https://twitter.com/famicom_fujita
公式YouTube=https://www.youtube.com/c/fujitachannel