2023年5月12日に発売されるNintendo Switch用ソフト『ゼルダの伝説 ティアーズ オブ ザ キングダム』(任天堂株式会社)の定価が“高い”と話題になっています。
本作は、アクションアドベンチャーゲーム『ゼルダの伝説 ブレス オブ ザ ワイルド』(2017年)の続編となるタイトル。前作は非常に高く評価された作品で、ゲーム内容も注目を集めているわけですが、今回は価格も気になるという人が出てきています。
『ゼルダの伝説 ティアーズ オブ ザ キングダム』の定価は、税込で7920円。果たしてこれは「高い」のでしょうか、「安い」のでしょうか?
数百円から1万円超えまで、本当に値段はいろいろ
そもそもテレビゲームのソフトの値段は、ゲーム機・時期・地域・発売するメーカーなどによってばらばらです。今回は、日本における家庭用ゲーム機を中心にいくつか例を見ていきましょう。
スーパーファミコンの時代は、実はソフトの値段がかなり高い時期でした。定価で1万円を超えているものもありましたし、コーエー(現・コーエーテクモゲームス)のソフトはさらにひと回り高い価格設定になっていました。
もちろんスーパーファミコンの時代もショップの値引きや投げ売りなどはあったものの、それでも当時の子どもたちは1本のソフトを買ってもらうのも大変でした(筆者もそのひとりでした)。
少し時代は進みPlay Station(ソニー株式会社)が登場しますが、ソフトはかなり安めになりました。定価が5800円の作品も多かったですし、時間がたつと廉価版のゲームソフトも登場しました。1500円でゲームが買えてしまう「SIMPLEシリーズ」(※)も大きな衝撃でしたね。
※SIMPLEシリーズ:ディースリー・パブリッシャーから発売されたゲームシリーズ。最初から廉価版として新規開発されたゲームシリーズで、主なゲームは『THE 麻雀』『THE 将棋』など。
そこからさらに時代が進むと、ゲームの値段はまた変化していきます。特に大きかったのはダウンロード版の登場です。インターネット環境が普及するとダウンロードタイトルを売ることができるようになり、数百円から数千円まで、かなり自由な値付けが可能になりました。
ネットゲームは月額課金や基本プレイ無料(アイテム課金)というシステムを生み出し、新たな料金体系の一部となりました。あるいはもっと時代が進むと、テレビゲームのサブスクリプションサービスも登場しており、月1000円ちょっとで大量のゲームが遊び放題なんて時代になっています。テレビゲームの値段も本当にいろいろになってきたわけですね。
というわけで一概に高い・安いとはいえないのですが、ひとまず近年の大規模タイトルと『ゼルダの伝説 ティアーズ オブ ザ キングダム』の価格を比較してみましょう。
フロムソフトウェアの死にゲーとして人気な『エルデンリング』は9240円です。そして、ハリー・ポッターの世界を冒険できる『ホグワーツ・レガシー』( Warner Bros. Games)は9878円となっています(どちらも定価で税込み)。
このような大規模タイトルは1万円前後なので、多くの人に期待されている大作としては『ゼルダの伝説 ティアーズ オブ ザ キングダム』の7920円はそこまで高くありません。ただし、Nintendo Switchの規模が大きいソフトは6500円程度なので、それと比較すればやや高めという結果になります。
「高い」か「安い」かは、感覚か実情か
さて、あなたは「7920円」が高いと感じましたか?
そもそもの話、買い切り型のテレビゲームは高く感じやすい傾向にあります。
テレビゲームはコスパで見るとかなりオトクな部類で、ひとり用ゲームでも何十時間も遊べるケースもありますし、対戦ゲームになると何百時間・何千時間も遊べてしまうのでかなり安いです。
1万円のゲームを20時間遊べば、1時間あたりにかけた金額は500円。映画より安いですよね。このくらいの価格帯の大作はそのくらい遊べるのが当たり前で、やりこめばもっと時間がかかります。
もちろんテレビゲームは途中で投げ出す可能性もありますが、値段的には高くはない娯楽のひとつです。むしろゲーム好きとしては、タイパが悪いとすら思えることがあります。長すぎるゲームを遊んでいると、2時間前後で終わる映画がうらやましくなるときもあるのです。
もちろん、リアルマネーで課金するガチャがあるゲームになってくるとまた話は変わってきますが、それはさておき。基本、買い切り型のテレビゲームは安いはずなのです。
とはいえ、実際に何かゲームを遊ぼうとするとゲーム機本体がそれなりにしますし、買い切り型のソフトも6000円~1万円程度と額面ではそれなりに迫力があります。やはり、これくらいの額が出てくると「安い」とは思いづらいですよね。
なので、感覚としてはテレビゲームが「高い」と思ってしまうのも仕方がないかもしれません。しかし実情を見ればそうではないわけで、どれだけテレビゲームのことを知っているかどうかで、高く感じるか・安く感じるかが変わるのかもしれません。
(文・渡邉卓也/編集・FM中西)