12月31日に行われる予定の第72回『NHK紅白歌合戦』についての予想を始めだした紅白ラバーズの3人が、本出場に次いで、特別枠や企画コーナー、さらには演出面についてもガッツリ議論!(聞き手/ミュージックソムリエ協会・高安紗やか)
【紅組・白組の予想はコチラ→『【紅白歌合戦ガチ予想・紅組】初出場枠が混戦も、上白石萌音やAKB48に期待大!』『【紅白歌合戦ガチ予想・白組】ジャニーズやEXILEはまとめ枠もアリ!? JO1ら新興勢力は』】
◎カーシー:自他ともに認めるトップクラスの紅白マニア。第14回以降、映像に残っている回はすべて視聴し、予想歴は20年以上。ミュージックソムリエの資格を持つ。自身のブログでも紅白や音楽について綴っている(https://kerseemusic.com/)。
◎新亜希子:アイドルほかエンタメ全般に詳しく、数々の媒体で執筆する音楽ライター。特に、ボーイズグループへの思い入れと知識量はピカ一。
◎臼井孝:昭和歌謡から最新邦楽、中でもカバー曲や大人音楽の普及を生業とする音楽マーケッター。詳細なデータに基づいたヒットチャートの分析力には定評がある。
◎高安紗やか:NPO法人ミュージックソムリエ協会 、CDショップ大賞事務局、ミュージックソムリエ講座、イベント運営など多岐にわたって活動。
特別枠・企画枠の出場予想は三者三様
──ここからは、特別枠、企画枠についても語ってもらいましょうか。
カーシー(以下「カ」):僕は、ABBA 、BTS、Adoさん、和田アキ子さん、そしてBank Bandと、ゲストボーカルとしてSalyuさん、宮本浩次さんを予想しました。
ABBAは40周年だし、2008年のエンヤがスウェーデンからの中継だったので、海外中継もありかなと。メインターゲットは50代や60代かもしれませんが、2000年代にドラマ主題歌やミュージカル映画でも世界的に大ヒットしているので、若い層にも人気があるはず。NHKには思い切ってほしいです(笑)。
小林武史、桜井和寿を中心に結成されたBank BandはNHKの音楽番組『SONGS』に出ましたし、昨年はMr.Childrenも出たので、桜井さんつながりで。あと、Adoさんは、ツイキャスなどSNSにはめちゃくちゃ精力的だけど一切、顔出しをしないので、本出場というより特別枠がいいかなと思います。そして、和田アキ子さんは今71歳なのですが、落選後の紅白批判もあるし、特別枠のほうが妥当ではないかと。あるいは、来年ラスト・ツアーが予定されている高橋真梨子さんもいいなと思います。
新:私は、田原俊彦さん、八代亜紀さん、小林幸子さん、松任谷由実さんなどの大御所と、ののちゃんこと村方乃々佳ちゃんを予想しました。
田原さんは紅白卒業宣言をされましたが、小林幸子さん同様に、いくつになっても精力的に活動されていて、それをコアなファンが応援し続けているのが強いと思いました。『うたコン』(NHK)に出たときも、足がよく上がって元気いっぱいでしたからね。八代亜紀さんは、今年50周年なので、本出場でもありだと思っています。全体的に若年の出場者が増えていますが、年配の視聴者に向けた配慮もあるべきという考えです。
そして、ののちゃんは、全国民がニコニコ見られるような存在ですし、今年もっとも聞かれた歌声といってもいいのではないでしょうか。あと、韓国出身だったらBTS以外に、Stray Kidsにも注目していますね。SNS関連では爆発的な人気で、紅組出場実績のあるTWICEが所属する事務所の後輩で親日的なので、可能性を感じています。
臼井(以下、「臼」):僕の予想は、BTS、新しい地図、桑田佳祐さん、そして若手から大御所・和田アキ子さんまで集めた“踊ってみた”企画と、宮本浩次さんや北村匠海さんらによる“昭和の名曲カバー”企画ですね。最近、Tik Tok発のヒット曲が急増しているとはいえ、そのうち紅白の大会場でも似合う曲は限られると思うので、企画コーナーくらいがいいかなと考えました。桑田さんも、これまでソロでの本出場は一度もないので、今年『SMILE~晴れ渡る空のように~』がそこそこ売れたものの、特別枠がいいかなと。BTSについては、K-POPというより、世界的ヒットの立役者として出れば華やかになりますよね。
──続いて、演出面についてお尋ねしますね。昨年、コロナ対策もあって大幅に増えた、ホール以外からの中継についてはどう思いますか?
カ:今年はNHKホールが改装されるため、国際フォーラムで開かれるのも見どころですね。すでにほかのメディアでは、最大規模のホールAをメインとしつつ、ホールBやホールCなどを効率よく使うのではないかと報じられています。
新:コロナ禍でスタジオやホールが分かれるのはしかたないとしても、外からの中継ばかりだと“紅白”が軽んじられている気もするんですよね。紅白に出たい人は山ほどいますし、今も大事に見ている視聴者もたくさんいらっしゃるのだから、本番にスケジュールを合わせる人にだけ出てほしいなと思います。ただ、昨年の紅白は、意外にも落ち着いて見られました。限られた条件の中で、別のスタジオをうまく取り入れていましたよね。
臼:確かに、無駄な演出がなくて“歌”が主役になっていましたよね。僕も、中島みゆきさんが黒部ダムで歌うなど、意味のある中継なら大歓迎です。
今年のトリにふさわしいのは、ズバリ !?
──そして、オリンピックやパラリンピックへの関与はどうですかね。
臼:僕は、新しい地図の特別枠出場に期待します。3人は、パラリンピックの認知を多岐にわたって推進してくれたので、彼らが再び紅白に戻ってくる絶好の機会ではないかと。なんなら、中居さんや木村さんも飛び入りしたら世界トレンドになるんじゃないでしょうか(笑)。
カ:ちなみに、ここ最近のメダリストの紅白出演は、2004年のアテネが17人、’08年の北京が3人、’12年のロンドンが6人、’16年のリオデジャネイロはパラリンピックも含めて7人。アテネのときは、特にメダリストが多かったのと、SMAP不出場の年でもあったことも関係していそうです。なので、今年はゲスト審査員でも最低2、3人、応援ゲストとしてもさまざまな形で楽曲を盛り上げてほしいですね。特に、スケボー選手は若いですし、開会宣言に出たりしたら面白いでしょうね。
新:ただ、それこそアテネ大会のときのテーマ曲『栄光の架橋』(ゆず)ほどの大ヒットはなかったので、コーナーにするとなると難しいでしょうね……。
──次に、紅白のトリ予想もしてもらいましょうか。事前アンケートでは、紅組はMISIAさんで全員一致しました。そして、白組は氷川きよしさん2票と、なんと松平健さんが1票!
カ:紅組はMISIA当確。白組は悩みつつ、安定した歌唱力とショーアップできる存在感で氷川きよしさんと予想しました。『限界突破×サバイバー』の披露が3回目となるかもしれませんが、トリでも見てみたいです。
臼:氷川さんがトリなら意外にも13年ぶりなんですね。『うたコン』(NHK)でも感動の渦が巻き起こったQUEENの『ボヘミアン・ラプソディ』のカバーを紅白でも聴きたい!
新:私も、氷川さんが大本命と思いつつも、個人的な希望で松平健さんにトリを託します。あの歌(『マツケンサンバ』)はまさにショーのクライマックス向けですよね。
臼:松平さんが出るなら、そこで、香取慎吾さんほか新しい地図の3人にヅラをかぶってゲリラ出場してもらいたいです(笑)。
──そして、今の話にも出ましたが、紅白歌合戦を男女別にすることについてはどうですか。
臼:僕は、男女どちらが優れているかという考えはなく、個人的に女性ボーカル曲が好きで、毎年“歌”の合戦を、今年は男性ボーカル/女性ボーカルのどちらがよかったかな、と単純に楽しんでいます。逆にその“区別”を“差別”と言われちゃうと、やや窮屈に感じてしまいます。
新:私も、紅白歌合戦の男女別は、大相撲の土俵が女人禁制であるように、ひとつの文化としてとらえています。また、代替案を考えるとしても、ほかに明確なものがない。例えば、35歳以上/35歳未満のように分けてしまったら、それこそ、まったく見ない人もいそうだし……。ただ、歌手の方から、「自分は白組と定義されるけれど、本当は紅組として出たい」と希望されるならば、そこは柔軟な対応があればいいなと思います。基本的には、男女別で紅白を分けることに賛成です。
──確かに、希望制って理想かもしれませんね。
カ:もし合戦形式を続けるならば、いちばんわかりやすいのが男女別ですかね。それに、男女ほぼ同数ずつ出場してもらうことこそ、ジェンダー論につながっていく気がします。例えば、女性ボーカルのヒット曲が極端に少なくなったからと言って、女性歌手の出場を大きく絞ったら大問題ですよね。逆もしかりです。
今年、そしてこれからの紅白に望むことは?
──最近は、視聴者投票を取り入れていることで、ほぼ白組が優勝しているんでしたっけ。
臼:それが昨年は、視聴時間に応じた投票数が得られるようにしたところ、男性グループのファンの投票数が相対的に少なくなったんですよ。その結果、視聴者投票で紅組優勢となり、そのまま紅組優勝となりました。やはり、自分の推しなどごく一部だけ見るのではなく、全体を通して楽しんでもらうのが紅白の醍醐味(だいごみ)ですよね。
カ:ただ、紅白どちらかに全部の票を入れなくてはならなかったので、そこは改善の余地がありますね。例えば、5票あれば、紅白「一方に5票、他方に0」ではなく、4:1や3:2でも投票できるようにするとか。基本的には、視聴時間制は継続してもらいたいです。
──司会候補についてはいかがですか。紅組で上白石萌音さんの名前が挙がりましたが。
カ:僕は二階堂ふみさんが2年連続でも面白いと思いますね。そこに、女性司会でNHKのアナウンサーがサポートなさったら完璧ではないでしょうか。
臼:白組は、大泉洋さんですかね。ちょっとトークが多いですが……(笑)
カ:あの、しゃべりすぎて、ほかの人にツッコまれるのがお決まりのパターンなんですよ(笑)。番組責任者を務める『SONGS』も好調で、来年の大河ドラマにも出ますし、9割がた間違いないと予想します。
──さて、最後の質問ですが、紅白歌合戦は「みんなで歌える歌」か、「各世代が好きな歌」のどちらを披露すべきでしょうか。
臼:僕は、どちらも残してこその紅白かなと思っています。新しい曲と古い曲は6:4くらいがいいのでは。ただ、非常に個人的ですが、石川さゆりさんには、そろそろ『津軽海峡・冬景色』と『天城越え』のテレコから抜け出させてあげたいです。2007年以降、この2曲しか歌っていないのですが、この10数年の間には椎名林檎さんや奥田民生さんの提供作や、KREVAさんやMIYAVIさんと組んで伝統的な日本の歌をアレンジした意欲作もあるんですよ。
カ:僕もバランスが大切だと思っていますが、石川さゆりさんのその2曲はカラオケの年間TOP100にずっと入っていますし、実際、僕も昨年『天城越え』を聴いて安心しました。
新:1年の総まとめという意味では、その年の代表曲が欲しいし、特に若い方は新曲を聴きたいでしょう。その一方で、懐かしのスタンダードを聴いて安心もしたいですね。例えば、松田聖子さんや郷ひろみさんは、今も新曲を出されていますが、紅白では誰もが知るアイドル時代の曲を歌われますよね。それによって、結果として、若い方を含め幅広い年代の方が楽しめると思います。
臼:あと、「一部の世代が好きな歌」として、あいみょんや、Official髭男dismなど若い世代中心の人気曲が選ばれるのもありですが、僕は、2000年代の秋川雅史さんや秋元順子さん、すぎもとまさとさんのような年配層中心の人気曲も紅白に選んでほしいですね。2010年の植村花菜さん『トイレの神様』なんて、初出場なのに、第2部にフルコーラスで歌って、“何としてでもオリコン1位よろしくお願いします!”みたいな意気込みが紅白サイドから感じられたじゃないですか。サブスク時代だからこそ、あれくらいの強引さを年配向けのヒット曲で見せてほしいです(笑)。
カ:五木ひろしさんは紅白に50回出場していますが、歌唱した楽曲のレパートリーは40曲以上とぶっちぎりで1位なんですよ。つまり、あれだけ幅広い世代の知るヒット曲がありながら、その年の新曲もかなり歌われている……。そのあたりは、自分のWebサイトでも詳しく語っているので、よかったら読みにきてください!
臼:何はともあれ、紅白で新年を穏やかに迎えたいですね!
新:私も演出込みで平和な紅白を熱望します!
──ということで、愛と情熱の紅白歌合戦予想座談会は、これにてお開きとします。本番は、よりいっそう盛り上がりそうですね!
(構成・文/人と音楽をつなげたい音楽マーケッター・臼井孝)