日々の飲酒量で認知症の発症率が違ってくる

 飲みやすく、われわれのフトコロにもやさしいはずのストロング系チューハイ。いったい、どんなふうに飲めばいいのだろうか?

「適正飲酒量、言い換えると健康を損なわないで飲めるアルコールの量は、毎日飲む女性だと1日10~13グラム。これは350ミリリットルの缶ビール約1本分にあたります。男性であれば20グラムまでが適正の範囲です」

 ロング缶(500ミリリットル)のアルコール量はおよそ36グラム。350ミリリットル缶にしても25・2グラムだから、毎日飲むには多すぎる。もしストロング系チューハイを飲みたいのなら、350ミリリットル缶の半分の量を楽しみ、残りの半分はパートナーや家族、仲間とシェアすべきだろう。量に物足りなさを感じたら果汁などで割って飲むのもいい。

 ちなみに、適正飲酒量を守って飲酒していた人と適正量以上を毎日のように飲んでいた人の65歳時点での認知症発症率を比べると、後者は6年早まるという研究がある。

 高齢期での認知症予防のためにも、“適量を守って正しく飲む”姿勢は欠かせない。

 前述の山崎さんや永吉さんのような女性は、1度、専門医療機関に相談するといいと斉藤さん。アルコール依存症は生活習慣の病であり、孤立化していく病でもある。人とのつながりを取り戻していくことも、支援や回復の中で重要だからだ。

 さらには、こんなことも。

「依存症は生物的な素因(遺伝的要因を含む)や心理社会的な影響が原因となることが多い。実は、いじめなどの逆境体験も原因になります。こうした経験をしている人は、自己肯定感が低く、“自分には価値がない”と感じています。その傷を、アルコールの酔いが忘れさせてくれるという学習をしてしまうと、離れられなくなります。これが依存症の本質で、“負の強化”といわれています

 これまで依存症は、快感や快楽など、脳の報酬系に作用する“正の強化”が原因とされていた。ところが、これには限界がある。いくら覚せい剤やセックスが気持ちよくても、使える量や回数には限りがあるのだ。

「ところが負の強化には限界はありません。つらかった過去の記憶や心理的な苦痛が、すべて消え去ることはないからです」

●1日の適切な飲酒量の目安(純アルコール20gに相当する酒量)

・日本酒(15%)……1合(180ミリリットル)
・ビール(5%)……中瓶またはロング缶1本(500ミリリットル)
・焼酎(25%)……グラス2分の1杯(100ミリリットル)
・チューハイ(7%)……缶1本(350ミリリットル)
・ウイスキー、ジン(40%)……シングル2杯(60ミリリットル)
・ワイン(12%)……グラス2杯弱(200ミリリットル)
※厚生労働省では男性の1日のアルコール摂取量を「20g程度が適切」としている。女性はその2分の1~3分の2だ