ぴろきのウクレレはハワイの木を使ったオーダーメイド製

 ウクレレには少なからぬ縁があったのだろう。今に至るまで30数挺(ちょう)のウクレレを買ったが、現在は特注のものを3挺、使い回している。美しい木目に貝殻が埋め込まれた、なんとも粋なウクレレである。それをぴろきは愛(いと)おしそうに奏でる。

「ただね、当時ウクレレ漫談といえば、大御所(牧伸二さん)がいましたからね。ですから僕はずっとギタレレ(ミニギター)で舞台に立っていたんです。大御所が亡くなって数年たって、やっとウクレレを使い始めました。やはり遠慮がありましたから。大御所とは仕事をご一緒させていただいたこともあります。“ギタレレっていうの、いい音するねえ”って言ってくださって。ただ、“これからはぴろきの時代だよ”なーんてことは、いっさい言われなかったですけどね(笑)

新型コロナに大打撃を受けるも……

 寄席をベースに地方営業や独演会と、ぴろきはずっと“リアルライブの場”を中心に活躍し続けてきた。例えば、芸能事務所のようなところに所属すれば、もっと早くテレビに出たりすることもできたのではないだろうか。

「売れたい、稼ぎたいという気持ちはずっと持ってましたよ。事務所に所属してタレント活動をするのも、確かにひとつの方法ではあったでしょうね。だけど、かっこつけて言えば、僕のいちばんの目標は“自分の笑いを作りたい”ということ。画家や陶芸家、作曲家が作品を残すように、僕は“ぴろきワールド”を作って残したいんですよ、最終的には。そのためには、お客さんがいる寄席で、集まってくれたみなさんと一緒に笑いを作っていきたい。それがとにかく楽しいんです」

 このコロナ禍で、ぴろきの仕事は100本以上飛んだ。

「春以降、電話が鳴ればキャンセルか延期の連絡でしたからね。どれだけ損害を被(こうむ)ったと思います? 20億ですよ!(笑)」

コロナ禍での苦しさを身振り手振りを交えて話すぴろき

 それでも「今年これだけひどかったんですから。来年は、今年の2倍は稼ぎますよ。所得倍増ですよ」と笑いを誘う。どこまでいっても何があっても、笑わせないと気がすまない。芸人の心意気である。

「やっぱり『笑う』って大事なことだと思いますね。自慢するわけじゃないけど、弟の知り合いがひきこもってしまったことがあるんです。そのとき僕の(ユーモアたっぷりの人生応援歌が収録された)CDを聴かせたんですって。そうしたら、部屋から出てきたという。それを聞いたときは、笑いが特効薬になったのかとうれしかったですね」

「人は楽しいから笑うのではない。笑うから楽しいのだ」という言葉もある。何があっても命が助かったら、次は明るい気分になりたいのが人間の性(さが)かもしれない。先の見えない昨今の情勢下においても、笑いは希望への第一歩なのではないだろうか。

 ぴろきの高座の締めは「明るく陽気にいきましょう」である。