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命を奪う殺人や大事故、社会的関心の高い子どもの虐待死などは、その背景にまで踏み込んだ続報であふれている。しかし、日々新たに発生するニュースに呑み込まれてほとんど続報されない事件も……。そんな、ちょっと気になっていた“あの事件”を独自に追う。

渡辺高嗣「続報のないニュース」

「糞を食べようと肛門に口を寄せる子犬も」8畳2間に174匹、多頭飼育一家の顛末

SNSでの感想
室内には犬がひしめき合い、想像を絶する光景が(画像提供:「どうぶつ基金」)
目次
  • エサを食べに勝手に来ちゃう
  • 行政指導の限界
  • 174匹との同居生活について家族は
  • 犬たちの今後はどうなる?

 犬の散歩中、ほかの犬と出くわし、牽制して吠える光景は、日常でもよく目にするものだ。ただ、その家の前を通るとはるかに超越したレベルの騒ぎが巻き起こるという。

「室内で1匹が吠え始めるとほかの犬も連鎖反応して、ワンワンワンワンとウェーブのような大合唱になるんです」(地元住民)

 8畳2間の平屋建て住宅内に雑種の中型犬などが174匹。想像を絶する大音量の鳴き声が外まで響き渡るという。

 島根県出雲市の民家でおよそ前例のない規模の多頭飼育崩壊が明るみに出た。

 飼い主は高齢夫婦と娘の3人家族。元々は自宅敷地内にある古びた2階建て住宅で暮らしていたが、犬の室内飼育で傷んだのか、のちに増築した平屋建て住宅で犬と同居するようになった。さらに不妊・去勢手術が追いつかず繁殖が繰り返され、世話が行き届かない状況に陥った。

 県からの支援要請を受け10月に室内に立ち入った公益財団法人『どうぶつ基金』の佐上邦久理事長が室内の様子を語る。

「棚や台所の流し台、ベッド、コンロの上やテレビ台などありとあらゆる隙間にびっしり犬がいて、満員電車のようでした。犬の排せつ物が散乱し、一部の床は糞がペタペタ踏み固められて土間みたいになっていました」

 家族は長年、犬に囲まれながら3度の食事や風呂を済ませ、身支度を整え出勤していたというから驚く。

 犬の大合唱をやめさせるのは主に母親の役割だった。

「母親は一斗缶のようなものをガンガン叩きながら“うるさい! 黙れ!”などと大声で叫ぶんです。すると見事にピタッと一匹残らず鳴き止むんですよ」(前出の地元住民)

 別の男性住民は、

「犬の鳴き声よりも、むしろ母親の怒鳴り声のほうがうるさかった」

 と打ち明けるほど。

 なぜここまで頭数が増えたのか。話は約40年前にさかのぼる。

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