嫌なことってあると思うけど──
投稿するのは渋谷の魅力だけでなく本やアートに料理など、さまざま。日々の楽しいことを見つけてはダジャレを交えてつぶやいている。
《(中尾彬さんと食事をして)元気に長生きするのは、彬かだ、はっはっは》
《(理髪店で)親父さんがカットしてもバーバーとはこれいかに》
《(以前モロッコの都市カサブランカへ旅行した時の思い出話で)そんなに着込んでカサバランカ? 》(……さらに「カサイランカ?」「カタコランカ?」まで)
「たいていは寝る前に、明日はこういうことをつぶやこうかな、と箇条書きにちょんちょんちょんと書いています。朝起きたときにそのメモを眺めると、あれ? こんなこと書いたんだなって新鮮な気持ちになってね。ツイート用の写真は必要なら、朝早くても夜遅くてもすぐに着替えて撮りに出ちゃうんです。フットワークが人一倍軽いんです。ハッハッハー! みなさんが何かの拍子に井上順のツイートを見たときに、あれ、くすっ、あはは、って、一瞬でも肩に背負ってるものをフワッと忘れてくれたらいいよね」
毎日楽しいことを見つけるのは大変だと思うが……。ネタって簡単に見つかるもの?
「見つかりますよ。1回だけね、明日何をつぶやこうか決まらなくて、ないな~ないな~ナイチンゲール、ないな~ないな~ナイジェリア、って言ってたんですよ(笑)。あ! これで遊んでみようと思いついて、そのままつぶやいて。だから結果的にネタがないことはなかった。楽しいことってね、毎日のようにありますよ。
ぼくはね、ジジイだから朝が早いんです、5時すぎには起きちゃう。パッと目が覚めたときに『ヤッホー!』なんだな、気持ちが。窓を開けて、お日さまにサンキュ~!って挨拶するんです。ハァア~ってため息で起きたことがないの。朝起きて、ため息が出たら1日つまんないよ。よしいくぞ! 今日もいいことあるぞ! という気持ちでスタートしたら、向こうのほうからいいことが寄ってきますよ」
そのためにも、外の世界に対して、自分から心を開いて向かっていくことが必要。「今日は1日に何個くらいうれしい、楽しい気持ちになれるかな」と考えているだけで、お日さまに守られて過ごせると、井上さんは話す。
「きっと嫌なことってあるんだと思うんだけど、ぼくには見えないですね」
両親から受け継いだ「素晴らしい感情」
ポジティブで明るいのは井上家の伝統。井上さんの父親も母親も明るくて賑(にぎ)やかな人だったという。
「とにかく賑やかで楽しいことが好きな両親でしたから。親父の名前は巌(いわお)というんですが、とってもハンサムなんです。ぼくが銀座に顔を出すようになったころ、『巌(がん)ちゃんの息子さんだ~。あんたのお父さんは面白くていつも笑わせてくれてたわよ』なんて、逸話を聞かせてもらったり。母親も本当に愉快な人でしたね。うちに来て『はあ、自分の映画を見るのも疲れちゃうわね』と言うから『なんの映画?』って聞くと『イングリッド・バーグマンよ』って(笑)。自分で似てると思ってるんですけど、それが本当に似ているの。だけど母は『あちらが私に似てるのよ、やだわ』なんて言ってね(笑)。ぼくはそういう親から生まれた子どもだな、って間違いなく思う。とても素晴らしい感情というか、武器のようなものをいただいたんじゃないかな」
こうしてインタビューをしている間も、井上さんは笑顔を絶やさず、楽しそうな空気に包まれている。かといって独善的ではなく、周りへの配慮もこまやか。ダジャレも井上さんにとっては大切なコミュニケーションツールのひとつだ。
「なんていうか、ダジャレって自分にとっての気休めでもあるし、その場をちょっとなごやかにできるかな、というのもある。頭の勉強にもなる。ダジャレを言うのでも考えるわけじゃないですか。人間、考えなくなると脳が劣化しますよね。筋肉も使わなければ劣化するのと同じです。だから人様にね、なんと言われようと、ダジャレは言い続けますよ~っ!」