それから休日は天気がよければ、どこか走ってますね。バイクに乗るようになって、仕事でうまくいくことが必ずしも幸せじゃないとわかった。逆に、仕事への意欲も出てきたし(笑)、バイクを通じて出会いも増えたし。何より気分がいい。ずっと笑ってますね」
さらに、もうひとつ増えた仕事以外の楽しみが、キックボクシング。
「役者や撮影部のスタッフ20人くらいの同好会で、週に1回、ボクササイズ的なことをやってます。それも面白くて、生きがいになっているかもしれない。今はコロナで無理ですけど、トレーニングの後にそのメンバーで飲みに行ったりもするんですが、10代~50代までさまざまな年齢の人がいるので楽しいですね。たぶん僕がいちばん年上だと思うけど、子どもでもおかしくない年齢の人とも、年の差を感じないでしゃべれるタイプなので(笑)」
「50を過ぎて、楽しみがふたつできた」と喜ぶ一方で、熱中できる趣味が必要だったのは、「独身というのが大きい」とも語る。
結婚は常に思っています
「家族がいれば、趣味がなくても向き合うものはありますからね。結婚は常にしたいと思っています。よく誤解されるけど、結婚したくないわけじゃなくて、離婚したくないから慎重なだけなんです。結婚するときと同じ気持ちで10年後もいられるのか、何があっても支え合えるのかとか、いろいろ考えてしまうので。正直、好意的に前向きに思ってくれた人もいました。でも、思う人には思われないのが世の常ですから難しいですよ(笑)。
もし今後するとしたら、結婚生活のイメージはふたつあって。ひとつは子どもがある暮らし。それがイコール結婚だと思ってきたので。もうひとつは、熟年同士が寄り添って生きるパートナーとしての結婚。一緒に旅行に行ったり、寂しかったら動物を飼ったりして。もしくは、相手に子どもがいる人との結婚もありかな(笑)」
「でも、そんなこと言いながら、ず~っとひとりかもしれないですしね」と、諦めぎみな発言をする理由は。
「僕は、よくも悪くも自由すぎるので、その自由が結婚によって奪われてしまうのは嫌だなというのもちょっとあります(笑)。気難しいですしね、僕は。例えば、現場でシナリオに注文つけたり、撮影を止めて提案して話し合いを求めたり、めんどくさい人だと思います」
好感度が欲しい
『痛快TVスカッとジャパン』のイヤミ課長に代表される、意地悪でイヤミな役を演じさせたら右に出るものがいない木下さん。しかし、人知れず葛藤もあるようで……。
「イヤミな役も、実はマイナーチェンジしているんです。でも、そういう演技は削られることが多い。僕に求められているのは、やっぱりわかりやすい、いつものキャラなんですよね。でも諦めずに日々トライしています」
逆に、カッコいい役の演技を主演で見てみたいが。
「それ、ぜひ書いてください(笑)。ただ、主役をやると困ったことに、あとは落ちるしかない。継続が難しいですよね。それより今、いちばん欲しいのは好感度なんです。たまには好感度のいい役もあって。昨年1月クールのドラマ『アライブ がん専門医のカルテ』で腫瘍内科医の役を演じたんですが、それはイヤミのない人ですごくイメージアップしました(笑)。一時的でかまわないから好感度を上げて、CMに出たいんです(笑)。老後のためにまとまったお金を稼ぎたい。それで安心したら、あとはイヤミな役でも何でもやりますよ」
今回の取材では私服で登場してくれた木下さん。ファッションのこだわりは……。
「ブランドにはこだわらないですけど、ちょっとかわいい服が好きです。50代にしては若作りかもしれないですけどね。昔“ちょいワルおやじ”が流行(はや)ったように、”ちょいカワおやじ”を流行らせたい。好感度上がりそうじゃないですか(笑)」
取材・文/井ノ口裕子
〈PROFILE〉
きのした・ほうか 1964年1月24日、大阪府出身。1980年公開の映画『ガキ帝国』で俳優デビュー。数多くのドラマや映画、バラエティー番組などで幅広く活躍。俳優業のほか、映画製作活動の場も広げている。現在、映画『無頼』『レディ・トゥ・レディ』『大コメ騒動』が公開中。
◎公式ブログ「ほうか道」http://www.diamondblog.jp/official/houka/