孤独なのは、自分だけじゃない

 実家の家族や他の病院にいる夫と電話すると、咳が止まらなくなってしまう。私の場合、新型コロナの症状でいちばん長く続いたのが咳だった。

 ある夜、寒気がした。検温すると微熱だった。

「寒気があるってことは、これから高熱になるかも」と怖くなって、看護師に追加の掛け布団を持ってきてもらった。

「これ以上寒くなったら、電気敷布があるから言ってくださいね」

 感染症患者である私に近づき、心配そうにシーツをかける。

 入院前からの常備薬である睡眠誘導剤を飲み、眠った。

 寝ている最中、耳につけたパルスオキシメーターが外れたようだ。気配がして目を開けると、看護師が静かに耳に挟みなおしてくれていた。

 翌朝、私の体温は平熱に戻っていた。

 3月20日の夜には地震があった。夕食のデザートであるバナナを食べているところだった。すぐに看護師が飛んできた。

「大丈夫ですか! 怖かったですよね」

 私が身体も心も安定した状態なのを確認してから、彼女は病室を出た。その後の数時間、静かな時が流れた。

とある日の病院食 撮影/若林理央

 病院食はお弁当で、食べ終えた後はゴミ袋に入れて病室の入り口に置いておくことになっている。1時間ほどしたら看護師が来て片づけてくれるのだが、その日は片づけがなかった。パニックを起こしている患者がいるのかもしれない。

 睡眠誘導剤を飲んで寝たが、幾度も目が覚め、新型コロナや他の病気で苦しんでいる他の患者さんのことが頭をよぎった。

 今、新型コロナ以外も含め、ほとんどの病院で入院患者の面会が禁止されている。

 3年前に腎盂腎炎(じんうじんえん)で入院したとき、ものすごく苦しくて、付き添いの夫がいなければ耐えられなかった。しかし、今はどんなにつらくて不安でも付き添いは許されない。

 そんなとき、私たちを支えてくれるのが医療従事者だ。

 涙が出てきた。私たちは孤独じゃない。