長く続くものには、「長く続くだけの理由」というものが、必ずあるものです。
『ドラゴンボール』『ONE PIECE(ワンピース)』『鬼滅の刃』など、メガヒットの人気漫画が次々と登場してきた集英社の漫画雑誌『週刊少年ジャンプ』。競争が激しく、生き残りが難しいその誌面で、なんと40年間(1976年~2016年)も連載を続けた漫画が、「こち亀」こと『こちら葛飾区亀有公園前派出所』です。
内容は、派出所勤務の主人公、両さんこと両津勘吉が、騒動を起こすギャグ漫画。言ってしまえば、そんな“他愛もない話”を描いた漫画が、いったい、どうして、そんなに長く続くことができたのでしょうか?
目新しさ・柔軟な変化・尽きないネタ
もちろん、長期連載を可能にした根底の理由は、作品の面白さにあります。ここでは、それは置いておいて、それ以外の理由について。
1つ目は、「目新しさ」。
実は、今でこそ普通のことになりましたが、連載当時は「この絵柄で、ギャグ漫画なの?」という斬新さがあったのです。
ギャグ漫画の絵は、『天才バカボン』で有名な赤塚不二夫さんに代表されるような、大人だって、せいぜい三頭身で描かれるような絵柄。
それなのに「こち亀」は、劇画のようなタッチなのにギャグ漫画。それが目新しくて、読者の目を引いたわけです。
2つ目は、「柔軟な変化」。
「交番を舞台にしたギャグ漫画」というスタートを切った「こち亀」。著者の秋本治さんは、「この路線では、すぐにネタが尽きる」と考えたそうです。
そんなとき、編集者からのアドバイスもあって決めたのが「下町をテーマにする」という新路線。ご自身が下町の出身なので、この路線はまさにビンゴでした。編集者の言葉を聞いて、柔軟に変化したわけです。
また、次々と個性的なレギュラーキャラクターを登場させたのも「変化」ですね。
3つ目は、「尽きないネタ」。
「こち亀」は毎回、自動車やメカなど、秋本さん自身が「好きなこと」や「興味があること」を描いていたので、ネタが尽きなかったのです。好きなことを描いているから、本人も楽しんで描けます。
秋本さんは、新聞や雑誌で気になる記事があるとスクラップしてネタとしてストックしていたといい、なんと40年間、ネタに困ったことはなかったのだそうです。