同じ意味だと思って口にしていたら、実は違っていた……。“いい大人”が恥をかかないためにも、知っておきたい「言葉の境界線」。週刊女性が各分野のプロに聞いて、とことん調べてみました!
知っておきたい意味の違い【健康編】
●「ウイルス」と「細菌」
どちらも厄介な病気の原因になるものだけど、具体的にどこがどう違う? 医学博士で医学ジャーナリストの植田美津恵さんが教えてくれた。
「ウイルスも細菌も肉眼では見えないサイズの微生物です。体内に入ると、感染症や食中毒などの病気を引き起こす点も共通しています。
ただし、細菌は抗生物質や抗菌剤が効くのに対し、ウイルスを殺す治療薬は存在しません。風邪で病院へ行くと、抗生物質を処方されることがよくありますが、ウイルスが原因の風邪を根本的に治す効果は期待できません」
さらに大きな違いとして細胞の場合、自分自身と同じ能力を持った細胞を生み出す「自己増殖能力」が備わっているけれど、ウイルスは細胞を持たず、別の生物に寄生することでしか生きられない。
コロナ第4波では“変異型ウイルス”が流行している。
「ウイルスには、遺伝子が突然変異を起こして常に変化し続けるという特徴があります。インフルエンザの流行に伴い毎年ワクチンを打っても効果がなかった、というケースがあるのも、このためです」
●「副反応」と「副作用」
新型コロナウイルスのワクチン接種が全国各地でスタート。副反応について報道されることも増え、不安に感じている人も多いのでは?
植田さんによると、
「副作用と副反応は、薬を飲んだあとやワクチンを接種したあとに、期待された効果とは異なる有害な影響が表れたことを指す言葉。どちらも根本的には同じ意味です。
では、何が違うかというと薬の場合は副作用と呼び、ワクチンに対しては副反応と分けて呼んでいるところ」
例えば、胃の調子を整えるために薬を飲んだら湿疹が出てしまったなど、期待した効果以外の症状が出てしまった場合は、副作用。ワクチンを注射したあと、打ったところが赤く腫れ上がったり熱を持ったりしたときは、副反応と呼ばれるというわけ。
「ほぼ同じ意味を持つ言葉とはいえ、副作用と言ってしまうと、世間からはどうしても重い症状をイメージされがち。それを恐れて、国や医療界では副反応という言葉を積極的に使い始めたのではないかと思います」
●「日射病」と「熱射病」と「熱中症」
まだ6月だというのに、早くも30℃超えの真夏日を記録している日本列島。そこで気になるのが熱中症だけど、昭和の時代には日射病と呼んでいたような……?
「日射病とは、文字どおり直射日光によって起こるものを指します。例えば、炎天下にスポーツをしていて倒れるようなケースです。大量に汗をかいて体内の水分や塩分が減ってしまい、脱水状態になるなどの症状が現れます。
かたや熱射病は、閉め切った室内など高温多湿な環境で起こるのが特徴。体内に熱がこもり身体が対処しきれず、めまいや吐き気、頭痛といった症状が現れます。意識障害を伴うことも少なくありません」(植田さん、以下同)
車内に子どもを残して買い物へ行き、戻ってきたころには衰弱していた……。そんな痛ましい事件が毎年のように報じられているけれど、この場合は熱射病に当たるそう。
「日射病も熱射病も、実は熱中症のひとつ。暑い環境で生じる健康障害の総称が熱中症なのです」