新型コロナウイルス感染拡大の影響によって、開催が1年延期になり、今も賛否両論がある東京オリンピック。選手たちにとって、今回ほどモチベーションの維持が難しかったオリンピックは、過去に例がなかったのではないでしょうか?
しかし、それでもアスリートたちは鋼(はがね)の精神力でそれを乗り越え、毎日のようにメダル獲得のうれしいニュースが飛び込んでいます。
現在の日本の状況がどうあれ、選手たちにはなんの罪もありません。さまざまな意見があるのは承知のうえで、個人的には、選手たちにエールを送る日々です。
そんななか、今回は『オリンピック憲章』を読んでみて知った、「どこの国でも普通にやっているのに、実はオリンピックではやってはいけないと決められていること」についてお話しします。
『オリンピック憲章』にある意外な一文
そもそも『オリンピック憲章』って、なんでしょうか?
ひと言で言えば、「IOC(国際オリンピック委員会)が定めた、近代オリンピックに関する規約」のこと。制定されたのは1925年で、その後、改定を繰り返して現在に至ります(最新版は2020年7月17日から有効のもの)。
これには、オリンピックに関するありとあらゆること……例えば、根本原則、開催地の決定方法、大会の進め方、報道や出版に関すること、さらに、オリンピックのモットー(「より速く、 より高く、 より強く」)や、オリンピックのシンボルマークについてなど、さまざまな事柄に関する決めごとが明文化されているのです。
オリンピックを開催する都市は、この憲章にのっとって大会を開催、運営しなければならないわけですね。
さて。私は昨年、一流アスリートたちの名言とエピソードに関する本を執筆しました。そのなかで、日本のマラソンの父と呼ばれる金栗四三(かなくりしそう)さん、日本人女子初のメダリスト人見絹江(ひとみきぬえ)さん、女子スポーツ界で初の国民栄誉賞を受賞した「Qちゃん」こと高橋尚子さんなど、特にオリンピックの出場者たちに関する原稿を書くにあたって、この『オリンピック憲章』に目を通しました。
そのときです。憲章のなかにあった「ある一文」を目にして、「えっ、そうなの? やってはいけないって決められているの? それにしては……?」と思ったのです。