数々の葛藤を語るきのコさんの表情は真剣そのもの 撮影/山田智絵

「私は女体ユーザーです」

 多くの人とは違う関係を築いているだけに、人間のどろどろした側面もたくさん見てきたのではないだろうか。だが、それをもすべて受け止めて、きのコさんは歩んできた。

「複数の人と付き合うというと、ただのセックス好きだと誤解されるんですが、ポリアモリーの中には性的関係を求めない人もいます。性欲が強いかどうかとポリアモリーであるかどうかは、まったく別の次元の話なんです」

 最近、きのコさんは、「カテゴライズすること」「レッテルを貼ること」への無意味さをますます感じるようになった。

「セフレと友だちと恋人、私の中にはもう区別がないんです。人として好きだし大事に思える、大事にしたいというところでの関係性が重要だし、恋愛感情と友情もわけるのが難しくなっています。何人かの中で今はこの人がいちばん好き、という時期もあるし、逆に、その中の違う誰かがすごく落ち込んでいるとしたら、他の人を差し置いてもその人のもとへ行ってあげたい。関係の濃度は時期によっても違うから、“この人とはこういう関係”と決めつけたくない

 きのコさんは今、あらゆるものから自由になり、解放されていく過程にいるのかもしれない。最近はジェンダーからの完全フリーも自認している。

「自分の性別が男か女かというより、性別という概念自体を使わずに生きていきたいんです。性別を決めたくない、名づけたくない。私自身は女性の身体だし、それは嫌ではないけれど、この“乗り物”に乗っていると社会的にはめんどうだなと思うこともありますしね。だから、“私は女体ユーザーです”と言っているんです(笑)。女体を使って社会的生活を送っている、と」

 大規模な交流会なども開催し、いつしかポリアモリーを代表する顔となったきのコさんだが、この立ち位置も少しつらいと思うようになっている。

「仲よしの仲間内では、私は柴犬みたいな存在なんです。だれも女として見ていないというか、人としてすら見ていないんじゃないか、という(笑)。でも対外的には、やはりイベントを主催したりすることも多いので、“(ポリアモリーとして有名な)あのきのコさん”と言われたりする。妙な偶像化をされて、本来の自分とは乖離(かいり)していく。代表選手みたいに思われるのはキツいですね。ポリアモリーにもいろんな人がいて、さまざまな関係を築いているから、私の発言が王道というわけではないことは理解していただきたいです