きのコさんは誰も否定しない。「モノガミーとポリアモリー、それぞれ好きなようにのびのびと生きていければいいなと思います」 撮影/山田智絵

“みんなでゆるく”つながることが大事

 アラフォーと呼ばれる年代になっているきのコさんだが、たとえば10年後、どういう生き方をしているだろうか。

「恋愛しているんじゃないかとは思いますが、わかりませんよね。もしかしたら誰とも付き合わなくなってしまうかもしれないし、“この人しかいない”と、いきなりモノガミー(1人だけと付き合う人)になってしまうかもしれない。恋愛感情も性欲もなくなっているかもしれない。でも、どんなときも、自分の変化を恐れずに生きていこうとは思っています」

 何かを決めて、それに則って生きたほうが人は楽なのかもしれない。だが、きのコさんはあえて変化を楽しもうとしている。それも、より自由であろうとしている証だろう。

「自分の欲望に忠実でいたいんです。我慢が美徳とされがちだけど、それは結局、自分をがんじがらめにしているだけ。かつてそれで苦しんだことがあるだけに、我慢を重ねて生きたくないと思っています」

 出産はほぼあきらめているというが、もし妊娠すれば生みたいとも思っている。

「自分のDNAにはあまり興味がないんですが、里親制度を使って“ファミリーホーム”みたいなものが作れないかなと考えることはありますね。閉じた“家庭”ではなくて、もっとより多くの大人たちが、いろいろな形で関われる環境で子どもを見守る。児童虐待やネグレクトの話を聞くたびに、もっと大人がいれば救えた命なのではないかと思う。だったら、実際にそういう環境を作っていけないか、と」

 コロナ禍で、人とのつながりの重要さを改めて感じているときのコさんは言う。大人だからこそ、ひとりですべてを抱え込んで破綻する人も少なくない。

例えば、望まぬ妊娠をした女性を受け入れられるところがあって、そこで出産、さらにはいろいろな立場の人たちと一緒に育児ができる場があったら……。

「コロナ禍が終息しても、あらゆる点でオンラインが主流になるかもしれない。でも、やはりリアルにみんなでつながっていくほうが安心度は高いと思うんです。楽しいからつながるんだけど、コロナのようにいつ何が起こるかわからないから、生き延びるためにも、“あなたと私”だけの関係ではなくて、“みんなでゆるく”つながることが大事なのではないかと思っています」

 自分をさらけ出して生きるのは、はたから見れば潔いが、それによるハレーションも大きい。そのすべてを受け入れながら、きのコさんは、自身の“人としての幅”を広げている。

(取材・文/亀山早苗)

【※きのコさんがポリアモリーとして生きていくことになったきっかけは、前編《「私はポリアモリー」向き合うのに10年かかった女性が矢面に立って発信を続けるワケ》で詳しく綴っています】