あなたは、例えば人前で話をしなくてはならなくなったとき、アガってしまうタイプですか、それとも、平気で話ができるタイプですか?
アガリ性の人にとっては、大勢の人たちの前で流暢(りゅうちょう)に話ができる人というのは、とてもうらやましい存在でしょう。
自分もあんなふうになりたいと思うのではないでしょうか?
そもそも、なぜ人はアガってしまうのか? 実は「人前でアガってしまう理由」というのは、たったひとつなのだとか。
そして、その理由を知ると、「人前でアガらなくする方法」も見えてくるのです。
かつての私は超アガリ症だった
かくいう私は、子どものころ、超アガリ症。
人前に出て話をするなんてとんでもない話で、体育や音楽の授業でよくあった「実技試験」なんて、クラスの皆が自分を見ていると思うだけで、頭の中が真っ白になって、いつもはできていることもできなくなりました。
小学校低学年のとき、音楽のハーモニカの実技試験で、緊張のために演奏を始めて数秒で別の課題曲を吹き始めてしまい、演奏が無茶苦茶になるという、自分でも信じられないような失敗もあります。
人前に立って自己紹介をしたとき、あまりの緊張で一瞬、自分の名前が思い出せなくなったことも……。
アガリ症で本番に弱いというのは、つくづく損だと思います。
本番でアガってしまう、たったひとつの理由
知人の心理カウンセラーの方から聞いた話によると、いわゆるアガリ症の人が、人前で何かをやるときアガってしまう理由というのは、実は、たったひとつなんだそう。
それは……。
恥をかくのが嫌で、「特別な自分」になろうとしてしまうから。
失敗して人から笑われるのを怖れるあまり、普段と違う、格好イイ自分を見せようとして、「自分ではない自分」になってしまう。その結果、「普段の自分」なら簡単にできることができなくなってしまう……というのが、「アガる」ことの方程式なのだとか。
たしかに、その瞬間は「自分」ではないのですから、できることができなくなっても不思議ではない話です。
では、いったいどうすれば、そんなアガリ症から抜け出せるのでしょうか?
アガリ症から劇的に抜けられた体験
プレゼンやスピーチなどでのアガリ克服法としては、次のような方法が一般的です。
・十分な下調べ、下準備を行う → 相手のことを調べたり、練習を積んだりする
・できる限り、アウェイではなくホームで行う → 自分になじみのある場所で行なう。それが無理なら、会場を下見する
・味方を見つける → 自分の話にうなずいている人などを見つけて、その人に話すようにする
ここで、もうひとつ。私のアガリ症が劇的に改善した体験を紹介しましょう。
子どものころからずっと、人前で話すのが苦手な私でしたが、大学生になると「人前に出ること」を自ら望むようになりました。
それは、クイズ番組に出ること。
相変わらず、予選の面接や、番組内での司会者との絡(から)みは苦手でしたが、なにしろクイズが好きなので、本番での早押しクイズなどは、ほぼ無心でできたのです。
そんな私が、あるとき、とうとう究極の緊張を味わいました。
その場面とは、テレビ番組『クイズタイムショック』(テレビ朝日系)の本番。
ご存じのように、高い位置にある解答者席に1人座らされて強制的にクイズに解答するという、心臓が口か飛び出しそうになるほど緊張するシチュエーションの番組です。
1分間に12問、次々と出題されるクイズに何問正解できるかを競うのですが、成績がよくないと、解答者席の椅子が回転するなどペナルティを受けることになります。
この番組に出たとき、私は1週目を勝ち抜き、同じ日に、2週目の収録にのぞみました。(当時の同番組は、チャンピオンは5週抜けで、はじめてゴールだったのです)。
私がやらかしてしまったのは、その2週目の収録でのこと。
緊張が限界となり、なんと、12問中3問しか正解ができず、椅子を回転させてしまったのです。
当時の「タイムショック」は、夜7時というゴールデンタイムの放送で、視聴率は20%を軽く超える人気番組。そんな番組のなかで、1週抜きのチャンピオンが椅子を回すって、とんでもなく恥ずかしい姿です。
「顔から火が出る」という表現がありますが、もう、顔から出た火でテレビ局を全焼させるくらい恥ずかしかったのを覚えています。
アガリ症克服のための、究極の方法!
でも。この「それまで生きてきた中で、最大の恥ずかしい体験」が、私の中で何かを変えてくれました。この番組のオンエア以降、どんな恥も「あのタイムショックの恥に比べたら、屁でもない」って思えるようになったのです。
そして、人前でもあまりアガらなくなりました。
アガる原因は、「恥をかくのが嫌だ」が唯一の理由でしたよね。その「恥をかくこと」が怖くなくなったので、当然のように、アガらなくなったというわけです。
人前でアガらなくなるための「究極の力技(ちからわざ)」。
それは、一度でよいので、大きな恥を経験してしまうこと。
そうすれば、「あのときにくらべたら、この程度の恥なんてどうということはない」って、思えるようになります。
かの萩本欽一さんも、お笑いの道に進んだ理由のひとつは、「アガリ症を克服したくて」だったという話を聞きました。
アガリ症を克服したければ、自ら大きな恥をかきにいく!
アガリ症に悩む方、騙されたと思って、試してみてください。
(文/西沢泰生)