参加者イジリから見守りのスタイルに
漫才ブームと、浪速っ子のおもしろさがうまくマッチして大ヒットしたこれらの番組も、約10年で人気に陰りが出始め、1985年までにすべての番組が終了。その2年後に『ねるとん紅鯨団』(関西テレビ)の放送が始まる。
「司会者は、当時、飛ぶ鳥を落とす勢いだったとんねるず。生放送の『夕やけニャンニャン』(フジテレビ)では、満員の観客をあおったりしずめたりと、素人を自由自在に扱う才能を発揮していました」
大勢の男女が参加するロケ形式が当時は斬新に映った。「ツーショット」「タカさんチェック!」など、数々の名ゼリフも生まれる。
「演出はテリー伊藤さん。『天才・たけしの元気が出るテレビ!!』(日本テレビ系)で名を轟(とどろ)かす、注目のテレビマンでした。ねるとんは30分番組ながら、ロケもスタジオ収録もあり、とても凝った作り。最後の“告白タイム”は、いつも真っ暗な時間帯でした。20分ほどの放送時間のため、ほぼ丸1日カメラを回していたのではないでしょうか」
広川さんは『ねるとん紅鯨団』が恋愛バラエティーの大きな転機となり、この潮流が今も続いていると話す。
「司会者と参加者が一緒にワイワイやっていた恋愛バラエティーのスタイルが、ねるとんを境に“参加者を見守る”形に変わりました。とんねるずのふたりは要所で仕切りつつも、フリータイムではモニターを見ながら参加者の動きを実況するのみ。参加者の行動を制限しないことで、よりリアリティーが生まれ、視聴者は他人の恋愛をのぞき見しているようなおもしろさが味わえたんです」
その後、1999年に放送が始まった『あいのり』(フジテレビ系)から、恋愛バラエティーは「リアリティーショー」へと昇華していく。
「流行(はや)りのJポップをBGMに、司会は加藤晴彦さんやウエンツ瑛士さんなど人気タレントを起用。笑いの要素は限りなく控えめです。ラブワゴンに乗りながら地球一周を目指すという壮大なプロジェクトのもと、連続ドラマのように毎週物語が続いていくのも画期的でした」
『あいのり』は深夜帯にもかかわらず最高視聴率20.4%を記録。リアリティーショーの先がけに。その後『テラスハウス』(フジテレビ系)などのヒットを経て、現在は『今日、好きになりました。』『オオカミくんには騙されない』(ともにAbemaTV)など、10~20代をターゲットにした番組も人気を集める。
「ネットテレビやVODに場を移しても、手を替え品を替え、恋愛バラエティーは生き残ってきました。いわゆる恋愛小説は、神話の時代から存在します。色恋沙汰への人間の関心は、太古の昔から不変だということでしょう」
リアリティーショーの本場・アメリカでは、カップル成立にいたるまでに、参加者同士のセックスも当たり前だとか……。あぁ、なんだか大阪のコテコテ恋愛バラエティーが無性に恋しい!
(取材・文/植木淳子)