アマチュア落語を通して人前で表現する楽しみを知った

──証券会社を退社して、35歳にして竹原さんの「自分探しの旅」が始まったわけですね。

「そうなんです。“私はこれができます!”って胸を張って言えるものが欲しかったんやと思います。その前から資格を取ったり、講座にもたくさん通ってました。

 短大のときには教員免許を取って、証券会社では証券外務資格というのを取りました。それからお花が好きやったんで、派遣会社に登録してからはフラワーアレンジメント教室にも通いました。学生のころ華道をやってたこともあって、絶対講師になろうと思ってたんですけど、センスがないことがわかってあきらめました(笑)。

 その後もいろいろ習いましたよ。笑顔教室にも行きました。相手にいい印象を与えるための笑顔の作り方を教えてもらえるんかなと思ってたら、今をどう生きるか? という自己啓発のような教室やったり、コーチング講座にそれが何か詳しくわからないまま通ったりもしました。とにかく受けてみよう! と行きました」

「“私はこれができます!”って胸を張って言えるものが欲しかったんやと思います」 撮影/吉岡竜紀

──アマチュア落語もされていますが、それもそのときに通われてたんですか?

「それは裁判所の臨時事務官のときなんですけど、自分の話が相手に伝わってないんかな? って思った出来事があったんです。ある日、職場でさんざん説明した後に、“え?”って聞き返されたんです。それで、“私の話が相手に伝わってないな、これはあかんな”と思って、まずは話し方教室に行きました。

 そこで、自分が言いたいことをわかりやすく伝える話し方を学びました。あるとき、教室の先生が落語家さんとお仕事された話をしてくださり、1回だけ落語を教えていただきました。それがとても楽しくて。そんなときに落語教室が新しく開講されるのを知って、1クール(3か月)だけ行ってみようと思って通うことにしました」

──すごい行動力ですね!

「楽しかったですよ。先生がその人の個性や持ち味を生かす指導をしてくださる方で、“竹原さんの声は子どもや丁稚(でっち)の落語に向いてる”って言ってくださって。

 西天満亭どんぐりという高座名で、老人ホームや会社の企業研修とか、裁判所でも呼んでいただきました(笑)。あと2015年に『神戸おこし亭アマチュア落語コンテストTHE落語女王』という大会があって、審査員特別賞をいただいたんです。そのときに、“どんぐりさんは科学的分析不可能な面白みがある”という講評をいただいて、それがうれしかったし、人前で何かを表現することが、何より楽しかったんです」

「“どんぐりさんは科学的分析不可能な面白みがある”という講評をいただいて」 撮影/吉岡竜紀