『カメ止め!』に出演して自分の欠点がプラスに変わった
──NSC卒業後はお笑い芸人として活動されたり、間寛平さんの「劇団間座」に参加してらっしゃいましたが、いちばん大きな出来事はやっぱり映画『カメラを止めるな!』のスクリーンデビューだと思います。いま振り返っていかがですか?
「最初にオーディションを受けたきっかけは、シネマプロジェクトの映画『退屈な日々にさようならを』(今泉力哉監督)舞台あいさつを見て感動、“映画作りって素敵やなあ、映画に自分の名前が残ったら素敵やなあ”と思ったんです。そのとき映画出演者の募集を見かけたので応募用紙を持ち帰り、演技ができるとかできないとか後先まったく考えずに申し込みました。それが『カメ止め!』だったんです。
上田(慎一郎)監督がいなかったら今の私はないやろうなって思います。上田監督との出会いは本当に大きいです。上田監督は“生きづらそうな人ばかりを選んだ”っておっしゃってました。……私、背は低いし、目も小さいし、おでこは広いし、声も音声変えました? みたいな声やし、すべてがコンプレックスで自分に自信がなかったんですよね。
NSCやアマチュア落語で“声がいい”と言ってもらえるようになって、1枚1枚コンプレックスがはがれていくような感じはあったんですけど、『カメ止め!』で“これでいいんや”って気持ちになれました」
──『カメラを止めるな!』出演後、女優業を続けていきたい! と思いましたか?
「思いました。勉強のつもりで申し込んだので、こんなに映画がヒットするとは思ってもいなかったんですよね。日比谷の大きな映画館で舞台あいさつをするときも、“わー、大きな映画館で舞台あいさつができるんや”って思ってうれしかった。でも舞台に立ったときに、“去年までは客席から見てた光景やのに、今は自分が舞台に立ってるんやな”って、すごく不思議な気持ちになりました。
しかも60歳近くでこの世界に入ってこの体験は感動です! 『カメ止め!』から人生が変わりました。今も試写を見るときは、自分が出てるシーンは“シワ多いなあ”とか“仁王立ちやん”ってツッコミながら見てます。すごい方々とご一緒させていただいて、“夢のようやな”っていう気持ちです。今までいろいろなジャンルのお仕事をやらせていただいてきましたけど、すべてが今につながっているなと思ってます」
(取材・文/花村扶美)
※後編『57歳で女優デビュー、竹原芳子が「すべては自分次第」と言い切れる理由』につづく
《PROFILE》
たけはら・よしこ ◎1960年2月10日、B型。短大卒業後、証券会社に就職。その後、派遣会社や裁判所の臨時事務官を経て、2010年NSC大阪校へ入所。2016年、間寛平さんが座長を務める「劇団間座」に参加。2017年、映画『カメラを止めるな!』で映画デビュー。以後、ドラマ『ルパンの娘』『探偵・由利麟太郎』、映画『かぐや様は告らせたい~天才たちの恋愛頭脳戦~』『最高の人生の見つけ方』『閉鎖病棟-それぞれの朝-』『あの頃。』『劇場版 ルパンの娘』『老後の資金がありません』などに出演。
Instagram:@donguri.lucky
Twitter:@YoshikoTakehar1
●公開中の出演作品
映画『劇場版 ルパンの娘』公式サイト
https://lupin-no-musume-movie.com/
映画『老後の資金がありません』公式サイト
https://rougo-noshikin.jp/