可もなく不可もなくでもいい? 求ム! 未来人の医者
TOP5、その最後に滑り込んだのは、医療ドラマと言っていいか迷うところではあるが、『JIN―仁―』の南方仁(大沢たかお)。
「南方に“僕が支えますから”なんて優しく言われたい」(兵庫県・75歳主婦)
「南方さんに“僕も全力で闘いますから。あなたも全力で”なんて言われたら……。キュンキュンしちゃいます」(愛知県・40歳主婦)
ドラマの中では坂本龍馬ですら心酔してしまうのだから、読者が魅(み)せられてしまうのも仕方がない。限られた資材や情報だけで応用してしまうアイデア力は目を見張る反面、吉田さんが「江戸時代では名医かもしれないけど、現代では普通レベルの医者かもしれない」というように、実はどの程度の実力の持ち主なのかは不明だったりする。
おまけに、原因不明の頭痛持ちでもあるため、診察中あるいは手術中に突然、「ウウゥゥ!」などと倒れ込まれたら厄介だ。人柄は申し分なしだが、瑕疵(かし)がないとは言い切れない。
だが、「南方仁のような未来人の医者がいたらなぁ」と吉田さんは妄想を働かす。
「例えば、今から200年後の世界から医者がタイムスリップしたとします。可もなく不可もなくの腕前でも、新型コロナウイルスに何が効くかは知っているだろうし、がんの治癒法も知っているかもしれない。そういう意味では、南方仁のような医者がいたら……」(吉田さん)
たしかに、未来人ならこのコロナ禍を鎮められるはず!
なぜ女医が少ない? もっと評価されてほしい作品は?
6位以下でも、医師に対するアツい思いをぶつける視聴者も多い。『医龍』の朝田龍太郎(坂口憲二)には、
「“焦らず、ゆっくり治していきましょう”と朝田龍太郎に言われたら、ずっと病院にいてもいい」(大阪府・50歳パート)
『救命病棟24時』の進藤一生(江口洋介)には、
「進藤さんに“あんちゃんがついているから”と言われたい」(東京都・49歳主婦)
という具合に、みなさん思い思いに妄想を爆発させる。
BSテレ東で放送されていた『神酒クリニックで乾杯を』、MAKIDAIが主演を務めた『町医者ジャンボ!!』などなど、マイナーな(失礼!)作品に思いをはせる人も少なくない。
また、先のクールで話題をさらった『TOKYO MER~走る緊急救命室~』がすでに高支持を集めているように、6位にランクインした鈴木亮平演じる喜多見幸太も注目のひとりだろう。
こうして人気を集めている作品(とその主人公)を見てみると、そのほとんどがシリーズ化されているものだとわかる。視聴者が感情移入できるような人格者、あるいは魅せられるようなスーパードクター、こういった医師が人気を集め、視聴率とも結びつくといえそうだ。
その反面、女医が少ないのは気になるところ。女性だけにアンケートを募ったこともあるが、吉田さんは、
「女性のドクターを主人公に置く作品は、医療の世界だけではなくヒューマンドラマに寄ったり、ケアの部分に寄ったりする傾向が強い。そういう意味では、大門未知子は異質(笑)」
と話し、女性の名医が登場するドラマもたくさんあると続ける。
「私個人は、天海祐希を信用しているので、『トップナイフ─天才脳外科医の条件─』はもっと票を伸ばしていいと思ったし、ランキングの中には入っていないものの、松下奈緒と木村佳乃が出演した『アライブ がん専門医のカルテ』はもっと評価されてほしかった。もし、私ががんになったら、この2人に診てほしいと思えるドラマでした。
災害時は、鈴木亮平にお願いしたいし、産科は星野源のお世話になりたい。TPOに応じて各ドラマの先生に診てほしい(笑)」(吉田さん)
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これだけ医療ドラマが人気を集め、個性豊かな医師がいるのであれば、いつかマーベル作品の主人公格が集結する『アベンジャーズ』のようなオールスター医療ドラマが見てみたい……そんな妄想すらしてしまうほど、やっぱり医療ドラマは面白い!
(取材・文/我妻アヅ子)