見返り美人ならぬ、“見返りイケメン”!! 撮影:伊藤和幸

ショーで披露する曲はオリジナルを重視して工夫を重ねた

──35周年記念ベストの限定盤では、先ほどの『Season of Love』のほか、『My Little Simple Words』を新録音で収録されていますね。ファンの方からは“『My Little Simple Words』は、かっちゃんの強い思いで収録したのでは?”と推測したご意見もいくつかありますが……。

それは当たっていますね。その曲は、僕が特に大好きなんです。『My Little Simple Words』は、サビの部分が初めは《♪Simple Words 大事なことさ~》だったんですが、《♪KO TO BA 大事なことさ~》に変えてもらったんですよ。そのほうが、言葉がバッチリはまって、歌詞の深みも出たんですよね。

 それと、ほかに歌詞が好きなのは『ロングタイム・ロマンス』。特に気に入っているのは、大サビの《♪もしも僕が僕のために恋をしたら(中略)愛はなんてさびしい出来事~》や、その前の《♪100年たったあと ひろいあげても 同じ声がするだろう~》という部分ですね。

 ショーの準備をしていたこともあって、僕もひと通り聴き直していたんですが、みなさんからの意見を見ると、“なるほど、この曲が好きなのか”って、新たな発見があって面白いですね。例えば『Super Star』(サウンドトラック・アルバム『PLAYZONE '90 MASK』)なんて、もともとはミュージカルのなかの曲だから、自分だけでは思いつかなかったです」

──確かに、名曲の数々をすべて聴き直すだけでも大変ですね。ショーにかける思いの強さも伝わってきます。

「はい。ランチタイム&ディナーショーは、たとえどんなに来場者が少なくてもやりたいと思っていました。まずは、いま来てくださるファンの方たちが1人でもいてくれたら、それを無理して増やそうという気持ちはなく、来年も来ていただけるように精いっぱい頑張る、というのが自分に合っている。(大々的にアピールしたいとか、)そういう欲がないんですよ。

 だから、2022年もショーは続けたいですね。長年のファンの方が来てくださっていることは本当にありがたいし、こうして自分の思ってもいない意見を言ってもらえるのも、すごくうれしいし、素直にすごいな、と感心します

まじめな表情から、満面の笑みまで。いろいろな一面を見せてくれる植草に胸キュン! 撮影:伊藤和幸

──それにしても、みなさんが“植草克秀”というボーカリストに惚れ込んでいることがよくわかります。また、少年隊の曲について、“間奏で激しく踊ったあとの第一声は、圧倒的にかっちゃんが多い”という指摘もかなりの数がありました。

「いやいや! おそらく僕が主旋律を歌うことが多かったから、印象がより強くなっているんじゃないかな。歌うパートは、当時の担当ディレクターだった鎌田俊哉さんが決めていましたが、ちゃんと3人で歌っています。

 鎌田さんには今回のショーで、バンド演奏の音のバランスをチェックしたうえで、なるべく原曲の持つイメージに近づけてもらっていて、おかげでだいぶ変わりました。今回は、これまで3人で歌っていたものを1人でやるわけなので、とっても大変です。でもやっぱり、好きなアーティストの曲を聴いたときに、オリジナルの雰囲気とずれていたら、ファンのみんなも嫌でしょ? そこで、3人で掛け合っていた部分は、コーラスに入ってもらうなど工夫して、とにかく“やらなきゃいけない”と思って頑張りました。

 このショーが一段落したら、そのあとはいろんな仕事をやってみたいですね。退所したからには、いま55歳の僕だからこそできることに挑戦してみたい。僕のことをよく知らない人からは、“植草がいちばん何もやらないんじゃないの?”なんて声もありそうですが、そうやって思ってくれるのは全然かまわないんです(笑)。そういうふうに、のほほんとしたイメージでとらえてくれているんだろうなって。でも実際のところ、ずっと以前からやりたいことはあったんだけれど、何かが悪いというわけじゃなく、なかなかタイミングが合わなかっただけなんです」

──新たなる挑戦のひとつが、2022年の2月、舞台『TARKIE THE STORY』(主演:凰稀かなめさん、共演は彩凪翔さん、夏樹陽子さんら)の演出を手がける仕事なんですね。

そうですね。もともと自分たちが出演してきたミュージカルも、制作はジャニーさんを筆頭にやりつつも、自分のパートは自分で演出したり、全体に対して提案したりしていたので、ある程度、客観的な視点で作ってきたんですよ。かといって、簡単にできるもんじゃないと思って覚悟していますが、それも自分へのチャレンジだと思っています。

 以前にミュージカル『PLAYZONE』(プレゾン。2008年まで少年隊が主演を務めた)で『WEST SIDE STORY』(2004年)を作ったときは、世界的な演出家の方が配役もすべて決めるなど、それまでとの舞台の作り方の違いに戸惑いましたね。日本では、普通はまず立ち稽古から始まるんだけど、海外の方は、配役の背景の説明、例えば、人種問題や宗教問題を理解させることから始めるので、準備が大変でした。しかも、そのときはニシキが敵役だったので、“メシも一緒に行くな、味方どうしで行け”などと徹底されるわけです。でも、そういう経験でも、これからの生き方を教えていただいたような気がしますね」