決して飾らない、自然なたたずまいのなかにも色気がにじむ 撮影:伊藤和幸

音楽のチカラを再認識。歌を中心に頑張りたい

──おっしゃるとおり、舞台演出はハードルが高いでしょうが、これまでの経験を糧に新たなことに挑戦しようとされる姿勢がすてきですね。

僕はイチから作り出すのが好きなんですよ。できているところに乗っかるよりも、乗っかる手前までを作るのが好き。それと、この前、以前に日常についてつづっていたノートが出てきたんですが、レーシングのときの路面温度やタイヤの空気圧なども細かく書き込んでいるんですよ。釣りに行ったときも、天気や水温、水深なども書いてあって。いろいろなことを詳細に調べたり、決めたりするのも向いているのかも。

 今、オリジナル商品を企画して作っているのですが、Tシャツ1枚にしても、“そんなにこだわったら高くて誰も買いませんよ”、ってスタッフに苦言されることもあるんだけど、でも俺が“着たい!”、“使いたい!”と言えるものを作りたいんですスタッフに任せっきりなんて、無責任な気がするんですよね。

 だから、Tシャツを作ったからには自分で着る、着るからにはカッコよくなきゃダメだ、と思うんです。デザインから形、色、生地に至るまで、全部こだわって作っています。そうじゃなきゃ、“かっちゃんのTシャツ買って、1回洗濯しただけでチビTみたいになりました~”なんてリプをもらったら申し訳ないでしょう? もちろん、商品を作る過程で独りよがりにならないよう注意を払っていますよ。それは、ベストアルバムやショーの選曲のときも同じですね

──周囲の意見を聞きながら作り上げていくというのは、大変なことだと思います。演出するとなると、今度は自分でも演じてみたくなるのでは?

「演劇の舞台に立つことについては、決して嫌ではないのですが、しばらくは歌のほうを優先したいという思いはあります。やはり、舞台は1か月くらいそれに集中するし、その前から1か月以上、稽古もしなくちゃいけない。そうなると、最低でも2か月は専念することになり、ほかにチャレンジしたい仕事が難しくなるかもしれませんね……。今は、音楽で伝えられることや、音楽のチカラというものが、改めてすごいな、と思っているんです。音楽って、その時代のにおいがしたり、思い出が浮かんできたりするでしょ?

 実は、今回のショーのために作った新曲『SHOW&TIME』を公演で披露したのですが、期間限定でのCD販売もしました。その曲のカップリング曲は『Letter…​』というバラードで、それは僕自身が作詞もしています。内容は、“聴いてのお楽しみ”ということで(笑)。作曲をしてくれた方は植草岳さん(アーティスト名:GAKU)で、たまたま同じ名字なんですよ。

 もっと時間があれば、アルバムも作りたかったのですが、どうにも間に合わないので、まずは2曲だけ聴いてもらって、2022年以降、じっくりと取り組んでいこうと思います現在の年齢に合った大人の魅力の歌もいいけれど、今もアイドル時代のような曲も好きで、どっちにせよ、ファンの方に愛される曲を歌っていきたいです

さらなる飛躍をひたすらに応援しています! 撮影:伊藤和幸

──ちなみに最近は、どんな音楽が気に入っているのですか?

「今年だと、ヒゲダン(Official髭男dism)が、何曲かヒットしたあとに『Cry Baby』という楽曲を持ってきたことに感心したなあ。あの曲って、マイナーからメジャーに転調したり、ヘヴィメタルかと思えばポップスに振り切ったり、さらにクラシックの要素も入っていたり、音楽的に高度なものをサラっとやっているのがすごいと思いました。

 少し前になるけど、いきものがかりも耳に残る音楽を作っていて好きですね。『ありがとう』や『ブルーバード』のサビの部分など、馬飼野さんや筒美(京平)さんに近いテイストを感じるんです。

 それと、最近はアニメから入るものも多いですね。寝る前にちょっと時間が空いていたら観られるので。ヒゲダンの『Cry Baby』は『東京リベンジャーズ』、LiSAさんの『紅蓮華』も『鬼滅の刃』からですよね。『紅蓮華』なんか、まだそこまでヒットしていないときに、“この曲、すっげーぞ!”って周りに言っていたんですよ。そのあと社会現象になってから、“ほら、やっぱり俺が言ったとおりじゃねーか!”って思いました(笑)。アニメ主題歌はまったくバカにできませんよ

──今でも若々しい感性をお持ちなのが、よくわかるエピソードですね! では、最後の質問です。植草さんは、今後も、“かっちゃん”と呼ばれていたいですか?

「そうやって呼んでほしいとかはないですが、ファンのみなさんに呼ばれたら自然に振り向きますよね。だから、いくつになっても大丈夫ですよ!(笑)」

◇   ◇   ◇

 全3回にわたって行ったインタビュー中、植草の言葉の数々は、常に“感謝”と“努力”に根づいたものであることが、ひしひしと伝わってきた。そして、そのまぶしすぎる笑顔ゆえに、彼の真価が見えづらく、ひいては誤解されそうなケースさえも許容する、寛容な心にも驚かされた。そんな彼の大きな支えとなっているのは、間違いなくファンとの信頼関係だろう。未来に向けて、信じた道を真っすぐ進み続ける植草克秀のさらなる活躍を願わずにいられない。

《取材・文/臼井孝(人と音楽をつなげたい音楽マーケッター)》
 


【PROFILE】
植草克秀(うえくさ・かつひで) ◎1966年7月24日生まれ、千葉県出身、O型。1980年代前半に少年隊のメンバーとして活動を開始し、1985年12月、シングル『仮面舞踏会』でレコード・デビュー。以降、9作のシングルでオリコン1位を獲得。少年隊の活動と並行し、ソロとしてドラマ『さすらい刑事旅情編』や『渡る世間は鬼ばかり』などの人気シリーズにもレギュラーで出演。2020年末にジャニーズ事務所を退所し、2021年1月より新会社「2steps」を設立。2021年12月22日にオンラインショップをオープン予定、ならびに2022年5月には、コンサートツアーも開催予定。

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