地方出身者は方言と標準語のバイリンガル
地方出身者の多くが、なんとか標準語をマスターしなければと苦労しているときに、関西弁使用者は、東京であろうと、はたまた日本のどこに行っても、関西弁を使い続けている人が多いと感じる。それは関西人の地元愛なのか、東京に対する対抗意識なのか、それとも標準語は話せないという居直りなのか。
滋賀県出身で、大阪在住の田辺氏に聞いてみると
「僕はよく、『関西出身なのに関西弁が出ませんね』と言われます。標準語で話すこともあれば、関西弁で話すこともあるわけで、両方使い分けられるんです。地方出身者の中には標準語と方言を使い分ける人は少なくないと思います。そのときの場面や相手によって、話しやすいほうの言葉で話しますから。ただ関西弁圏の人間は、地元以外では関西弁を使わないようにしようという気はさらさらないので、口から出る率が高く、目立つということでしょうね」
関西弁を標準語と同じくらいメジャーにしたといわれる明石家さんま。関西弁漫才で東京に乗り込んできたダウンタウンの松本人志と浜田雅功も、東京在住歴が長くなりプライべートでは標準語で話をしていると聞く。
「関西弁の面白さって、ゆっくり話すと、相手は“なめられてるんじゃないか”と感じたり、語気を強めると“怖い”と感じたりするんですよね。話すスピード感やテンションで、聞こえ方が違ってくるのが、お笑いに向いているんじゃないでしょうか。
もう少し分析してみると、江戸では100万人の人口のうち半数が武家だったそうで、身分の上下が厳しくあり、言葉もまた上下関係に即して使われてきていたそうです。一方、大阪は商人の街で、人と人とは対等に接するという文化があった。しかも商売をするために、立場に関係なく親しみやすい言葉で人々が接してきた。“言葉をも商売道具に”というルーツがあるんだと思います」