結婚するぞー!っていう気持ちだけ

 終始トークをリードするのは妻の浅美先生。それをどっしりと受け止め、笑顔で聞く光原先生が印象的。現在と変わらず(?)出会った当初から勢いがありつつも、しっかりと慎重に愛を育んだ二人。96年1月の交際開始から結婚は約3年半後のこと──。

浅美「たしかね、会った時が私は28歳。あと2週間で29歳になる年」

光原「僕が30か31ぐらいかな」

浅美「そう。それで結婚した時は32歳と35歳か」

 ここまでの流れを読んできた人なら、きっとわかるでしょう──。99年の念願のゴールインのひと押しだって、

浅美「……私が押せ押せですよ。うおー! 結婚だ! 結婚だ! と

光原僕は、あんまり結婚はどうかなとか思っていたんだけど、まあ結構ね、押してくるから。まあ、そろそろいいかなみたいな

──この頃って、ちょうど浅美先生が『Romancers』を連載されていたころだと思うんですけど、お忙しいお仕事ですし、ジャンプ作家さんって漠然とですが、すごくお稼ぎになるイメージがあるので、結婚への不安みたいなのはなかったですよね?

光原「いやまあ、僕は不安だったというかね、大丈夫かなとは思ったけど……やっていけるのか」

浅美私は結婚になんのリスクがあるのかも知らなかった。とにかく、するぞーっていう気持ちだけ。バカそのもの(笑)。うちの親が、“どんなに失敗してもいいから、1日や2日で別れてもいいから、とにかく一度は結婚は絶対にしろ!”ってうるさかったんです。それに子どものころから少女マンガ育ちだし、(少女マンガは)最後は結婚して幸せになるのが多いじゃないですか

夫婦でお出かけした際に撮影したという浅美先生(左)と光原先生

週刊連載は仕事もきついけど

 漫画家の仕事がどんなものか、具体的に細かく知らない人でも、「忙しい」「大変」と思っているでしょう? ましてや何百万人の読者が読む『ジャンプ』に毎週描くことのヤバさと言ったら、もう。連載を抱えているときのルーティーンを聞いてみたら、

光原1週間のうち3日でネーム(下描き)を仕上げて、あと3日で絵を描いて、仕上がったら半日寝てる感じですかね。だからずっと仕事です

──『アウターゾーン』は1つのストーリーが連続するのではなく、1話で完結のものがほとんどでしたよね。起承転結を3日間で考えるんですか?

光原「ええ。だいたい3日目にアシスタントが来るようにしておいて、そのプレッシャーで仕上げるようにしていましたけどね。でもアシスタントが来ても、できていないことが多かったですけど」

──奥さまもネームに3~5日、原稿4~3日とのことですが、それぞれアシスタントの方は何名ぐらい抱えてらしたんですか?

浅美「うちは5人です」

光原「僕は4人かな」

──週刊連載、壮絶ですね。

光原仕事もきついんだけど、アシスタントに気を使ったり食事を用意したりするのも結構大変なんです

浅美うちは『WILD HALF』のときとかは、実家だったので母が作っていました。当時は親に月30万円ぐらい入れて、“これでみんなのご飯を作って”って。食材と労働力を考えたら30万円じゃ安かったんじゃないかって感じ。悪いことしちゃったな

教室のすみにいるタイプでも家が買える

 影響力があるということは、それだけ売れていた証拠。飛び抜けている媒体で命を削って描いていた見返りも、当然ながら大きかったことでしょう。

光原「(お金は)貯まると言えば貯まる。使わないし、そもそも。使う時間がないし」

浅美私は家、買うぞーって。まずその分は使わないで貯める。あと、この日々が終わった後に何も描ける気がしないから、その後、食っていけるようにしたいって言ったら、親が勝手に全部天引きしては個人年金のほうにドドドドッて。だから手元にはお金がなかったです

──連載期間中に家が買えるぐらい貯まるって、ジャンプ作家の素晴らしさですね。

浅美「連載期間が終わった時に、その貯金額を見て、“今、買うしかない! 無駄遣いをする前に買うしかない!”と。ちなみに当時の週刊少年ジャンプを学校の1つのクラスとしたら、スクールカーストが上のほうの派手な子たちがいて、生徒会長がいてとかっていう世界の中では、私は教室のすみっちょにいるタイプだけど、そういうタイプでも家は買える。夢はあるよね。単行本の累計部数は、たしか600万部

──いやいや、600万部ってものすごい部数ですよ!

浅美「いや、ほら、1億部いっている作品もありますし。そういうところと比べると」

光原僕も彼女と同じか、ちょっと少ないぐらいの単行本部数かな