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人物

“カレー女子”と呼ばれてから約10年、異色の評論作家・手条萌さんが会社員をしながら本を出し続けるのはなぜ?

SNSでの感想
手条萌さん。質問に対して真摯に答えてくれた 撮影/北村史成
目次
  • 子どものころから趣味は「評論を読むこと」
  • 同人誌をきっかけに商業出版が決まる
  • 自分が本当にやりたいことに気づいた
  • 会社員をしながら評論を書き続ける理由
  • 同人誌もクオリティにこだわりたい
  • 評論を書くことは呼吸のようなもの

 平成元年生まれの評論作家・手条萌さんは、平日は会社員をしながら休日に評論を書いている。これまでに出した書籍や同人誌を並べると、その数は膨大だ。

 2016年、手条さんは初めての商業出版となる著書『カレーの愛し方、殺し方』(彩流社)を刊行。それをきっかけに、数々のテレビやラジオに出演した。手条さんは当時を振り返ってこう話す。

「あのころは、メディアで“わかりやすいキャラ”を作らないとダメだと思い込んで、“カレー女子”として、『カレーのおすすめ店ランキング』とか、論じることがメインでない仕事の依頼も受けていました。でも、だんだんと気づいてきたんですよね。私が書きたいのは、思考のきっかけを誰かに与えることのできる評論だって」

 手条さんが抱いた思いは、10年近く経った今も変わっていない。

出した本のジャンルも多岐にわたる 撮影/北村史成

子どものころから趣味は「評論を読むこと」

 手条さんの肩書きは「評論作家」である。

「『評論家』はラーメン評論家とかお笑い評論家とか、ひとつのテーマに絞り込まれるイメージがあって。総合的に評論をしたいので、評論作家と名乗っています」

 振り返ると子ども時代から、手条さんは評論が好きだった。

 周囲に読書の習慣がある人がいなかったので、国語の教科書を開き、子ども向けの評論やエッセイを読んでいた。

「中学生のときの作文を見返したら、『将来の夢は評論家』って書いてありました」と手条さんは笑う。

「小説家とかテレビで見るコメンテーターのほうがイメージしやすいのに、私は当時から評論を書く仕事をしたいと思っていたんです。

 中高でも、好きな科目は現国(現代国語)。そのなかでも評論が得意で。いいと思った作品があると国語便覧を開けて、作者のプロフィールを調べました。小論文の授業も楽しかった。大学で評論を専攻したのも自然な流れでした」

 手条さんは、広島から関東の大学に進学。通っていた大学では、ゼミの教授が学生の書いた評論を音読することがあった。

「自分の評論が読まれたあとに褒めてもらえたり、議論のきっかけになったりしました。あのときのうれしさは忘れられないし、今のモチベーションにつながっています」

 大学では、ほとんどの人が大学院に進んだ。しかし、手条さんの趣味はお笑いの劇場で漫才を見ること。劇場に通うためにはお金がいるし、遠征費用もほしい。そのために、手条さんは就職を選ぶ。

「卒業記念のような感覚で、みんなで評論を書いて同人誌を出そうって話になって、私も誘われて寄稿しました。内容はアイドル評論とカレー評論です」

 思いがけず、「文学フリマ」(2002年から始まった、小説や批評誌などの展示即売会)に出したその同人雑誌が、手条さんが評論作家としての道を進むきっかけとなる。

同人誌をきっかけに商業出版が決まる

 一般的に、同人誌というと漫画のイメージが強いが、なかでも文学フリマは文芸系同人誌の即売会として有名で、文字がメインの作品もたくさん並んでいる。出展ブースのなかに、すでにデビューしている人気作家の名前を見つけることもある。

「編集者の方も来場していて。文学フリマのあと、とある出版社の方から連絡があって、私が寄稿したカレー評論を“うちから書籍として出してみませんか”と言われました」

 そして刊行されたのが、前述の『カレーの愛し方、殺し方』である。

カレーの本っていうと、作者はカレー研究家なのかと思われてしまいがちなんですが、カレーは食べ物なので、食文化としてもピックアップできるテーマです。私は文化評論として『カレーの愛し方、殺し方』を書きました。それまでは同人誌でしか書いていなかったので、商業出版に慣れていないこともあって、刊行まで3年ほどかかったのですが、そのあいだにカレー評論の同人誌も、単著として出して。それらの影響か、テレビやラジオの番組からいくつもオファーをいただきました」

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