しかし、このゲームには強烈な攻略法が存在したのです。
それは「安全地帯」の存在です。
画面右下に自機を潜り込ませると、厄介な弾丸をほぼ避けることができます。
うわさで知った安全地帯の存在を、ゲーム少年だった私は信じられませんでした。画面右下といったら、右スクロールのこのゲームでは相手の銃口の目の前に立つような行為です。もしも右下に敵や敵弾が出現したら避けることは絶対にできません。
とはいえ、通常プレイの攻略はほぼ不可能だろうと、バルキリーパイロット引退も脳裏に浮かんでいた私は安全地帯説を信じて右下に飛び込みました。
自機の上を敵が次々とかすめていく緊張感!
しかし当たらない! 当たらないのです!
ステージ後半で敵の数が増えると流れ弾が一発当たりましたが、致命傷にはならず、あれよあれよといううちにボスステージに到着です。潤沢なライフさえあれば、ボスの撃破などたやすいもの。これまでなめさせられた苦渋のお返しとばかりにボスを撃破して、ステージ2に進みます。
「小白竜(シャオ・パイ・ロン)」を口ずさみながら
このゲーム、ステージ2以降の構成はステージ1とほぼ同じなのです。背景も同じで出現する敵の種類も同じで攻撃パターンが異なるだけ。障害物はそもそも存在しません。
ということは──
安全地帯がステージ2以降も通用するのです。
最も危険と思える場所が、最も安全な場所であったのです。
そうです。もうわかりますね。
あなたが“敵”と遭遇し、戦いたくないと思うなら、最も危険と思える相手の懐に飛び込みましょう。
逃げて距離を置くよりも、距離を詰めてみることで案外、攻撃を受けないこともあるはずです。近距離のコミュニケーションを図ることで敵対関係が解消することも期待できます。
さあ、敵が現れたときの対処はもう迷いませんよね?
困ったら右下です。
リン・ミンメイの「小白竜(シャオ・パイ・ロン)」を口ずさみながら相手の懐に飛び込みましょう。
(文/野中大三)
《PROFILE》
ゲームとプロレスをこよなく愛するコラムニスト兼ドット絵師。電子玩具開発を経て、株式会社カプコンでテレビゲームのプロデューサーを務め、オリジナルタイトルや人気シリーズタイトルのプロデュースを手がける。現在も電子ゲームの開発に携わっている。35年にのぼるプロレス観戦歴とゲームプレイ歴の経験から日本最大のプロレス団体、新日本プロレスオフィシャルサイトでコラム「ゲーム的プロレス論」を連載中。プロレスラーをドットで表現する「dotswrestler」をTwitterで公開中。