60歳、自分のなりたかった自分になれている

──アーティストとして、年齢を重ねることによって変化していることはありますか?

ステージで高いところからのジャンプは怖くなりましたけども(笑)、そのぶん音楽の説得力は絶対的に手に入れたと思うしね。自分のなりたかった自分になれているんじゃないかな

──2月1日に還暦を迎えられましたが、それは通過点という感じでしょうか?

いや、けっこうショックですよ(笑)。いよいよ若ぶるのはみっともないし、逆にいったら、大人ぶる必要はない。60っていうのはそういう年齢かなと。ただ、矢沢(永吉)さんやザ・ローリング・ストーンズのような元気な先輩方もいるので、まだまだ60とも思う。たぶん70になったときには、“60は若いよ”と思うんでしょうけど。

 とはいえ、僕の憧れのデヴィッド・ボウイは69歳で亡くなっていますしね。これからキャリアもできる限り続けていきたいし、ステージに立つために身体をメンテナンスしていこうとは思う。今まで何千回ってやってきましたけど、これから先どのくらいライブをやれるのかなと思うと限られているだろうし、一本一本が大切ですよね。今までにも増して、自分に言い訳をしないように充実させていきたいと思います

布袋寅泰 撮影/渡邉智裕

──変わらぬ若さと健康を保つ秘訣(ひけつ)は?

「散歩したり、YouTubeを見ながらヨガもどきみたいなことをやったり、軽くストレッチをしたりするくらいです。筋トレはあまり好きじゃないし、なんとなく似合わないじゃない?(笑)。年齢を重ねていくと無理をしないことのほうが大事だと思うし、実際、身体の調子もいいですし。無理しないのが秘訣ですね

──プライベートでリラックスする時間は?

散歩は好きです。ツアー中もライブの前に、朝8時くらいに起きて散歩に出かけてます。朝5時まで飲んでいた昔からは考えられないですね(笑)。最近は、城めぐりが楽しくなってきたり。昨年のパラリンピックからずっと東京にいるので、家族とも7か月会っていませんから、ひとり時間の使い方が上手にならざるをえないですよね。

 本当は旅が好きだし、ロンドンに住んでいると、東京から北海道や沖縄に行くぐらいの感覚でイタリアやスペインやヨーロッパのあちこちに行けますから、それもロンドンに住む楽しみのひとつだったんですけど。それも今はまだ、ままならないので。コロナがひと段落したら、日本ツアーのあとの夏休みは、家族でどこか島にでも行きたいですけどね」

生き方で大事にしていること

──今、生き方で大事にされているのはどんなことでしょうか?

「やっぱり仕事が好きですしね。仕事=僕の一番好きな音楽なので、音楽を作って、音楽を聴いてもらって、そのためのプロモーションも、今はすごく楽しい。いろいろ楽しめるのは集中力が出てきた証拠だと思うんですけどね。

 何を大切にしているかというと、昔から、よくON/OFFの切り替えとは言ってたけど、それって本当に大事なことで。今言ったように集中力がやっと発揮できる年代なのか、キャリアなのか、今の自分の充実感っていうのは、そこだと思うんですね。必要以上に頑張らないから、必要以上に疲れないし、それで集中するときはガチっとやる。それは、人に点数をつけてほしいんじゃなくて、自分の中の100点にいかに近づけるかという自分の中での戦いなんです。それに尽きますかね

──これからチャレンジしたい夢は?

そこはゴールではないのかもしれないけど、その言葉が僕をずっと動かし続けているという意味では、やっぱりワールドツアーの成功ですね。それはライブハウスであろうと、どんな規模であろうと、ギターとともに世界を旅するという少年時代の夢は、いかなる形でも叶えたいなと思います」

──布袋さんの夢を諦めない原動力は何なのでしょうか?

それはやっぱりCuriosity(キュリオシティ)。好奇心だと思いますね。何か事柄がひとつ結末を迎えたとき、その先に何があるんだろうって好奇心を持ったときには、もう一歩前に踏み出しますからね。それが一番だと思う

(取材・文/井ノ口裕子)

《PROFILE》
ほてい・ともやす 1962年2月1日、群馬県高崎市出身。伝説的ロックバンドBOØWYのギタリストとして活躍し、1988年にアルバム『GUITARHYTHM』でソロデビューを果たす。プロデューサー、作詞・作曲家としても才能を高く評価されており、クエンティン・タランティーノ監督からのオファーにより、『BATTLE WITHOUT HONOR OR HUMANITY(新・仁義なき戦いのテーマ)』が映画『KILL BILL』のテーマ曲となり世界的にも大きな評価を受ける。2012年よりイギリスへ移住。4度のロンドン公演を成功させるなど、世界的な活動を続けている。アーティスト活動歴40周年を迎えた2021年1月、日本武道館にて『HOTEI 40th ANNIVERSARY Live”Message from Budokan”』、無観客配信ライブ開催。同年8月24日には「東京2020パラリンピック」開会式にて、『TSUBASA』『HIKARI』の2曲を制作し出演。圧倒的なパフォーマンスを披露。9月から12月まで全国26公演の40周年ツアー『HOTEI 40th Anniversary~Double Fantasy Tour~“BLACK or WHITE ?”』を実施。2022年2月1日にリリースした20 thアルバム『Still Dreamin’』を携えた全国ツアー『HOTEI the LIVE 2022”Still Dreamin’ Tour”』の開催が決定。5月7日群馬・高崎芸術劇場よりスタートする。

●公開情報

『Still Dreamin’―布袋寅泰 情熱と栄光のギタリズム―』
監督・脚本:石田雄介
制作:東北新社
配給:東宝 映像事業部
(c)2022「Still Dreamin」製作委員会

公開:2022年2月4日(金)〈2週間限定〉全国ロードショー

(c)2022「Still Dreamin」製作委員会
映画公式サイト:https://umusic.jp/hotei_moviePR