収録場所の近くで数時間待ち
クイズの収録がある日。バスでクイズ会場の近くに着いたチャレンジャーたちは、クイズの収録場所から少し離れたところで待機します。
クイズがどんなルールで行われるかは、本番までチャレンジャーには秘密なので、そのヒントになってしまう収録セットが見えないところで、本番が始まるまで待つのです。
この時間がとにかく長かった。
収録場所ではスタッフたちによる入念な用意とリハーサルが行われていましたから、チャレンジャーは、何もない場所で2~3時間くらい待たされるのはざらだったのです。
負ければ即、帰国というプレッシャーのなか、いつまで待っても本番がはじまらず、この待ち時間に精神的に参ってしまうチャレンジャーもいたと聞きます(ちなみに私は緊張から、冗談を言いまくっていました)。
待機場所でずっと待っていると、やがて、スタッフが呼びにきてくれます。
そこからクイズの収録場所までは歩いて移動。その移動の際、チャレンジャーは全員、目隠しをさせられました。
なぜ、目隠しをさせられたのか?
目隠しをしたチャレンジャーは、スタッフに手を引かれて収録場所に向かいます。
解答席に座るときも、手を引いてくれているスタッフから「ここがイスです。気をつけて」なんて言われて座ります。
解答席に座ったあとも、本番が始まるまでは目隠しのまま。
やっと「目隠しを外してください」と声がかかって外してみると、間髪を入れずに本番がスタートするのです。
なぜ、わざわざ目隠しをするかというと、そのチェックポイントでどんなクイズが行われるか、本番開始までわからないようにするためです。
例えば、もし目隠しをしないでクイズの収録場所に行ったとき、解答席に早押し機が乗っていたら、「これから早押しクイズなんだな」とわかってしまいます。解答席に早押しボタンがなくて、スケッチブックとペンが置かれていたら、「書き取りクイズなんだな」ってわかってしまいますよね。
各チェックポイントでのルールは、本番がスタートして、司会の福留功男さんがルール説明をしたときに、はじめて明かされる。
スタッフは、そのルールを聞いて、「えーっ!」なんて一喜一憂するチャレンジャーの表情を撮りたいのです。
私はスタッフから直接、「ウルトラクイズはクイズ番組ではなく、人間ドキュメンタリーだと思って作っている」と聞いたことがあります。
事前にクイズのルールを教えず、チャレンジャーたちの「素の表情」をカメラに収める。
そんな、細やかなこだわりにも、ウルトラクイズがたくさんの人たちを夢中にさせた魅力の一端があったのではないかと思うのです。
(文/西沢泰生)